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第Ⅰ章 耳
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鼓 膜 tympanic membrane, ear drum
(図Ⅰ-5)
外耳道と鼓室の間の楕円形の膜で,成人では大きさ
約9.0mm×8.5mmで,厚さ0.1mm
です。
外耳道から耳鏡を使って視診する(p.22参照)と,光が反射してみえる
光錐と,鼓膜に付着するツ
チ骨柄やツチ骨短突起が確認
できます。
ツチ骨短突起より上部の鼓膜を弛緩部といいます。その他の部位を
緊張部
といい,組織学的に
皮
膚層,固有層,粘膜層の3層
からなります。固有層は弾性線維に富み,これによって鼓膜のピーン
と張った状態が維持されています。
弛緩部には固有層がなく,中耳の圧の影響を受けやすく,滲出
性中耳炎や真珠腫性中耳炎の病変が発生する部位(Prussak腔)で重要
です。耳鏡検査(図Ⅰ-29)で,
鼓膜の奥にキヌタ骨やアブミ骨,鼓索神経などが透見できることがあります。
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耳 管 auditory tube, Eustachian tube
(図Ⅰ-1,5c)
上咽頭と鼓室を連絡する管腔で,成人では長さ
約3.5cm
です。側頭骨に囲まれた鼓室に近い
1
/
3は骨部,上咽頭に近い2
/
3は軟骨部です。
耳管は普段は閉鎖していますが,嚥下運動などの際
に口蓋帆張筋が収縮すると開き,中耳腔の圧を調節
しています。
幼小児では成人に比べて太く短く
ツチ骨
弛緩部
Prussak腔
ツチ骨
キヌタ骨
顔面神経
アブミ骨(底),
前庭窓
内耳
蝸牛窓
鼓室
短突起
鼓膜輪
緊張部
ツチ骨柄
光錐
外側半規管隆起
乳突洞
前半規管隆起
顔面神経隆起
鼓膜張筋半管
内頸動脈管
耳管(骨部)
前庭窓(卵円窓)
アブミ骨筋腱
蝸牛窓(正円窓)
鼓索神経
Fallopio管および顔面神経
乳様突起
乳突蜂巣
キヌタ骨
アブミ骨
アブミ骨筋腱
鼓索神経
蝸牛窓窩
a
c
b
図Ⅰ-5 中耳
a:右耳の鼓膜から耳小骨を透見したところ(図Ⅰ-30, 67参照),b:前頭断面図,c:内側面,鼓膜と耳小骨をはず
してある。破線は内頸動脈の輪郭