A 解 剖
5
Ⅰ
章
耳
3
-
1
耳 介 auricle
(図Ⅰ-4)
耳介の大部分は耳介軟骨からできており,そ
の役割は
音を集めること(集音機能)
です。
3
-
2
外耳道 external auditory meatus
(ear canal)
(図Ⅰ-1)
耳介中央の外耳孔から鼓膜までの
約3cm
の
通路で,
外側1
/
2の軟骨部と内側1
/
2の骨部
か
らなります。外耳道は学童期まではほぼまっす
ぐですが,成人では軟骨部が前下方に弯曲して
います。
軟骨部皮膚には耳毛が生えており,皮脂腺や
耳垢腺があり,耳垢が生じやすくなっていま
す。骨部皮膚は薄く,少しの刺激で痛みを感じ
ます。知覚神経は前壁に
三叉神経
の枝,後壁に
迷走神経
の枝が分布しています。耳掃除によって咳
嗽が生じる(ear cough)のはこのためです。
4
中 耳 middle ear
(図Ⅰ-1,5)
中耳は側頭骨の中にできた含気腔で,
耳管,鼓室,乳突洞,乳突蜂巣
などからなります。外側は
鼓膜によって外耳道と,内側は
前庭窓(卵円窓)
と
蝸牛窓(正円窓)
によって内耳と境されています
(図Ⅰ-5b,c)。前方は耳管によって上咽頭に交通しており,
前内側に内頸動脈が走行
しています
(図Ⅰ-5c)。
4
-
1
鼓 室 tympanic cavity
鼓室の
前方は耳管によって上咽頭に,上方は乳突洞を経て乳突蜂巣に通じ
,外側には鼓膜,内側
には内耳が存在します。鼓膜と内耳(前庭窓)をつなぐ3つの
耳小骨
auditory ossiclesがあり,形態
にちなんで鼓膜側から
ツチ骨
malleus,
キヌタ骨
incus,
アブミ骨
stapesと呼びます。ツチ骨は柄
と頭に分かれ,柄は鼓膜に付着し,頭はキヌタ骨の体と連鎖しています。キヌタ骨は体と脚に分か
れ,脚の1つ(長脚)はアブミ骨の頭と連鎖しています。アブミ骨は頭,脚,底に分かれ,底は前庭
窓にはまり込んでいます。3つの耳小骨は連鎖しており,鼓膜の振動を蝸牛に伝える仕組みになっ
ています(p.14参照)。
また,2つの耳小骨筋があり,ツチ骨には
鼓膜張筋
が,アブミ骨には
アブミ骨筋
が付着していま
す(図Ⅰ-5c)。それぞれ三叉神経,顔面神経の枝の支配を受け,アブミ骨筋の収縮によってアブミ
骨が固定され,音は内耳に伝わりにくくなります。つまり強大音響負荷(70〜90dB以上)や発声に
際して,主に
アブミ骨筋が反射的に収縮することによって耳小骨の動きが抑制され,内耳を保護
す
るように働きます。これを
アブミ骨筋反射
(p.28参照)といいます。
三角窩
対耳輪脚
耳輪脚
外耳道孔
耳珠
対珠
耳垂
対耳輪
舟状窩
耳介結節
(Darwin)
耳輪
図Ⅰ-4 耳介