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  第Ⅰ章 耳

神経は蝸牛軸から蝸牛に入り,ラセン神経節spiral ganglionを経てコルチ器の有毛細胞にいたりま
す。内耳の神経は双極性で一端は内耳の感覚細胞にシナプス形成し,一端が内耳道から橋ponsに
ある蝸牛神経核や第四脳室底(橋から延髄にかけて)の前庭神経核に至る神経を形成しています。

内耳に分布する血管は

前下小脳動脈からの枝

であり,最終的には前庭蝸牛動脈と固有蝸牛動脈が

分布しています。

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聴覚伝導路

(図Ⅰ-12)

聴覚の伝達は,外耳から中耳まで音波を

振動として伝える

伝音系

と,内耳での電気

的刺激が神経伝達へ変換されて伝わる

感音

からなります。
蝸牛有毛細胞は聴覚の末梢受容細胞で

す。蝸牛神経は聴覚路の第一次ニューロン
で,

蝸牛神経核

に達し,ここで二次ニュー

ロンが出て,

大部分は反対側に交叉

上オ

リーブ核,外側毛帯核,下丘

inferior col-

liculusへと伝達されます。さらに視床の

側膝状体

を経て,

側頭葉の聴覚野

〔横側頭

回(Heschl回),Brodmann area 41〕に達
します。(p.17参照)

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顔面神経

(図Ⅰ-1,5b

/

c,13)

顔面神経は,

内耳道から鼓室内側の側頭骨内を走行するので,しばしば耳疾患で異常をきたしま

。顔面神経核は橋にあり,蝸牛神経などと一緒に内耳道を走行し,内耳道底部前上方から前方に

障害部位による難聴の分類(図Ⅰ-12)

聴覚伝導路の障害部位により難聴を分類します。伝音系(外耳,中耳)の障害に起因する難聴

伝音難聴

conductive deafnessといい,感音系(内耳より中枢)の障害による難聴を

感音難

sensory deafnessといいます。さらに感音難聴は

内耳性難聴

後迷路性難聴

(内耳より中

枢の障害)に分類され,末梢性難聴と中枢性難聴という分類もあります。

KEY

POINT

横側頭回

(Heschl回)

内側膝状体

下丘

蝸牛神経核

らせん神経筋

外耳

内耳

(末梢

中枢)

皮質

中枢

感音系

中耳

伝音系

外側毛帯核

上オリーブ核

図Ⅰ-12 聴覚伝導路