10
第Ⅰ章 耳
神経は蝸牛軸から蝸牛に入り,ラセン神経節spiral ganglionを経てコルチ器の有毛細胞にいたりま
す。内耳の神経は双極性で一端は内耳の感覚細胞にシナプス形成し,一端が内耳道から橋ponsに
ある蝸牛神経核や第四脳室底(橋から延髄にかけて)の前庭神経核に至る神経を形成しています。
内耳に分布する血管は
前下小脳動脈からの枝
であり,最終的には前庭蝸牛動脈と固有蝸牛動脈が
分布しています。
6
聴覚伝導路
(図Ⅰ-12)
聴覚の伝達は,外耳から中耳まで音波を
振動として伝える
伝音系
と,内耳での電気
的刺激が神経伝達へ変換されて伝わる
感音
系
からなります。
蝸牛有毛細胞は聴覚の末梢受容細胞で
す。蝸牛神経は聴覚路の第一次ニューロン
で,
蝸牛神経核
に達し,ここで二次ニュー
ロンが出て,
大部分は反対側に交叉
し
上オ
リーブ核,外側毛帯核,下丘
inferior col-
liculusへと伝達されます。さらに視床の
内
側膝状体
を経て,
側頭葉の聴覚野
〔横側頭
回(Heschl回),Brodmann area 41〕に達
します。(p.17参照)
7
顔面神経
(図Ⅰ-1,5b
/
c,13)
顔面神経は,
内耳道から鼓室内側の側頭骨内を走行するので,しばしば耳疾患で異常をきたしま
す
。顔面神経核は橋にあり,蝸牛神経などと一緒に内耳道を走行し,内耳道底部前上方から前方に
障害部位による難聴の分類(図Ⅰ-12)
聴覚伝導路の障害部位により難聴を分類します。伝音系(外耳,中耳)の障害に起因する難聴
を
伝音難聴
conductive deafnessといい,感音系(内耳より中枢)の障害による難聴を
感音難
聴
sensory deafnessといいます。さらに感音難聴は
内耳性難聴
と
後迷路性難聴
(内耳より中
枢の障害)に分類され,末梢性難聴と中枢性難聴という分類もあります。
KEY
POINT
横側頭回
(Heschl回)
内側膝状体
下丘
蝸牛神経核
らせん神経筋
外耳
内耳
(末梢
中枢)
皮質
中枢
感音系
中耳
伝音系
外側毛帯核
上オリーブ核
図Ⅰ-12 聴覚伝導路