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タイプ分類・重症度分類

1 合併症状による分類

遺伝性難聴は,しばしば,難聴以外の明確な臨床症状を有する「症候群性難聴(syndro­

mic hearing loss)」と,難聴以外の臨床症状を有さない「非症候群性難聴(non-syndromic 
hearing loss)」に分類される。疾患頻度としては非症候群性難聴が難聴全体の約70%を占
め,大多数はこのタイプの難聴である。

非症候群性難聴の場合,難聴以外の臨床症状を伴わないため,臨床情報だけから原因を

特定するのは困難である。また,遺伝子以外の原因の除外が必ずしも容易ではないため,

「遺伝性」の診断のためにはしばしば家族内での集積についての問診が必須である。ただ

し,劣性遺伝形式をとる遺伝性難聴の場合,近年の少子化に伴い同胞に罹患者が認められ
ず,孤発例となっているケースが多いため,家族歴のない場合でも「遺伝子」が原因であ
る可能性を考える必要がある。その一方で症候群性難聴では,各種の特徴的な症候の組み
合わせを有しているためその診断は比較的容易である。本手引きでは,

Ⅲ 各論でとくに

取り上げて議論している。

2 難聴の種類による分類

難聴の種類は,標準純音聴力検査の結果から①感音難聴,②伝音難聴,③混合性難聴に

分類されるのが一般的である。

感音難聴は,内耳あるいは聴神経から聴覚中枢に至る経路のいずれかに障害があり,純

音聴力検査の結果として気骨導差を示さない。感音難聴の根本的な治療は困難で,その慢
性期には補聴器が用いられ,より高度な感音難聴に対しては人工内耳埋め込み術を行う。

伝音難聴は外耳道,鼓膜,中耳(耳小骨)の異常によって生じる疾患であり,遺伝性難

聴では,外耳道閉鎖症,耳小骨奇形,アブミ骨固着症等が伝音難聴の原因となり得る。聴
力検査上では正常な骨導聴力にも関わらず,気導聴力の低下を認める。鼓室形成術やアブ
ミ骨手術の適応となる場合がある。

混合性難聴は,気導・骨導聴力の両者にある程度の難聴を認め,かつ気骨導差を認める

ものである。ただし前庭水管拡大症などの例では,見かけ上の骨導聴力が良好な例が存在
しうるので評価には注意が必要である。

3 聴力のパターンによる分類

一般に気導聴力で聴力図の描く障害のパターンから,①水平型,②高音漸傾型,③高音

急墜型,④低音障害型,⑤谷型,⑥皿形等に分類する方法がしばしば用いられる。遺伝性
難聴では家族内で同様の聴力型をとることが報告されており,また,同一の遺伝子変異が