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Ⅰ
適 応
異物の種類は年齢層や合併疾患の有無により大きく異なる。食道内で固定した異物は,経
口摂取やその後の併発症・偶発症の問題からも摘出の適応となる。食道異物は,その形状,
大きさ,種類により迅速かつ慎重な対応が必要となる。食道異物の多くは,内視鏡検査によ
り,その種類と位置を的確に診断することができる。また食道異物の多くは内視鏡による摘
出術が可能であり第一に試みられる手法である
1)
。
緊急性のあるもの
◦
食道壁や周囲臓器を直接損傷する危険性のある異物(PTP,有鉤義歯,魚骨,ガラス片,
カミソリ刃等)
◦
毒性の内容物や粘膜傷害をきたす可能性のある異物(乾電池,ボタン電池等)
◦
食道内腔が閉鎖され経口摂取が困難となる異物(食物塊,異食によるビニール製品等)
Ⅱ
前準備
問 診
誤飲した可能性のある異物の種類,形状,時刻,自覚症状の有無,最終食事,既往歴や常
用薬等について問診する。しかし,認知症,脳血管障害等の症例では,訴えのないことも多
く診断までに時間を要することが多い。自覚症状では嚥下時痛,嚥下障害,異物感,流涎の
有無等を確認する。
単純X線検査
咽頭,頸部から胸部腹部の範囲で撮影を行う。頸部,胸部では正面,側面の2方向で撮影
する。椎体との重なりによる影響を回避でき,異物の形状や位置をより正確に診断できる。
食道穿孔による縦隔気腫や皮下気腫,また気胸の有無を確認する。
CT検査
X線透過性の異物診断にはCTやMRIが有用である。異物の位置と周囲臓器との位置関
係や異物に伴う併発症(気腫や縦隔炎,膿瘍形成等)の診断に欠かせない検査である。MDCT
(multidetector-rowcomputedtomography)は,周囲臓器(大血管損傷や気道系損傷)と異
物の位置関係が立体的に,かつ明確となるため,摘出方法の選択に関する重要な情報となる。
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3章
手
技
3章 手 技
成人食道異物摘出の実際
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