Chapter
A
眼球運動の診察
•
眼球運動制限の診察には,各注視方向で主にどの外眼筋が働いているかを知
らなければ何も情報は得られない.各外眼筋の最大作用方向は,
内直筋:内転方向
外直筋:外転方向
上直筋:上転方向,特に外上転方向
下直筋:下転方向,特に外下転方向
上斜筋:下転方向,特に内下転方向
下斜筋:上転方向,特に内上転方向
であることを丸暗記ではなく,眼球と外眼筋の形態学的な位置関係で理解す
る(
図1
).
1 頭位の変化
(代償頭位)
の観察
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代償頭位を観察すると眼球運動異常をある程度推測できる.臨床的によくみ
られる代償頭位は,下記がある.
頭部を傾ける:滑車神経麻痺,ocular tilt reaction(眼頭部傾斜反応)
頭部を回転する:外転神経麻痺,先天眼振
顎を上げる,下げる:垂直注視麻痺,垂直筋麻痺
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また,各外眼筋が単独で麻痺した場合の代償頭位は,実際には起こり得ない
が各外眼筋が正面視(第一眼位)で単独で働いたと仮定した時に起こる眼球
運動の方向と一致する.
3
基本診察