342
Chapter 10 • 網膜と脈絡膜
⃝
血圧を測定する。
⃝
臨床検査:空腹時血糖、グリコヘモグロビン、全血球計算などを行う。50歳未満
の患者では、血小板数やプロトロンビン時間/部分トロンボプラスチン時間、プロ
テインC、プロテインS、第V因子ライデン変異、アンチトロンビンⅢ、ホモシス
テイン値、抗核抗体(ANA)、リウマチ因子(RF)、鎌状赤血球症、抗リン脂質抗
体、血清蛋白の電気泳動、ヘモグロビン電気泳動、Venereal Disease Research
Laboratory(VDRL)試験、fluorescent treponemal antibody absorption(FTA-
ABS)試験を行う。50歳以上の患者では、巨細胞動脈炎による動脈炎性虚血性視
神経症を除外するために赤沈、CRPを調べる。もしそれらが陽性かつ患者の既往
歴と検査結果が一致するなら、すぐに巨細胞動脈炎の治療を始める(第11章参
照)。もしBRVOが視神経乳頭浮腫や網膜炎を合併するなら、猫ひっかき病やライ
ム病、トキソプラズマ症のような感染性の原因を調べるための血清学的検査を考慮
する。
⃝
フルオレセイン蛍光造影:網膜中心動脈の分枝における充盈遅延や欠損を示す。分
枝動脈の支配領域は、楔状の無灌流領域となり、後期になると閉塞部位および血管
壁が染色されてくる。閉塞が解除されると、網膜血流は通常は元に戻る。
⃝
光干渉断層計:急性期では細胞内浮腫に一致して網膜内層の肥厚と高輝度を示す。
網膜外層の輝度はブロックされる。時間が経つと、網膜内層の萎縮に伴う網膜の菲
薄化がみられる。
⃝
既往歴から圧迫性病変が疑われる場合、除外するためにBモード超音波検査や眼
窩のコンピュータ断層撮影(CT)を考慮する。
⃝
基本的な心電図や心エコー(心臓弁疾患を除外する為に経食道エコーが必要となる
こともある)、頸動脈ドップラーエコーを含む網羅的な心血管の評価を内科にコン
サルトする。
⃝
50歳未満の患者では、凝固能亢進の評価を考慮すべきである。
予後
数週間で蒼白化していた網膜が消退し、循環は改善される。中心窩への影響を
免れた場合は予後が良く、80%が20/40以上の視力となるが、多くはある程度の視野
欠損を残す。僚眼での発症リスクは10%ほどである。
網膜中心動脈閉塞症(CRAO)
Central Retinal Artery Occlusion
定義
網膜中心動脈の循環障害により網膜全体の虚血が引き起こされる。
管理
⃝
中心窩の灌流が影響を受けている場合は、CRAOと同様の治療を行う(下記参照)。
しかし、予後が良いことと治療の効果が不明であることから、治療は議論の余地が
ある。
OPHTHALMOLOGY_7-付録.indd 342
2017/09/14 18:22