Ⅰ.抗菌薬
A
抗菌点眼薬を理解するための基礎知識
病原菌の基礎知識
抗菌点眼薬による治療が適応される眼感染症としては,麦粒腫,眼角眼瞼
炎,涙囊炎,細菌性結膜炎,細菌性角膜炎および細菌性眼内炎などが挙げら
れる。これらの眼感染症の好発原因菌は疾患により異なる他,年齢によって
も異なる。
病原菌はグラム染色によりグラム陽性菌とグラム陰性菌とに分類され,ま
た形態学的に球菌と桿菌とに分類される。前眼部感染症の原因菌としては,
グラム陽性球菌またはグラム陰性桿菌が高頻度で分離されている(
表1
)。
治療は,グラム陽性球菌に対しては,セフェム系およびフルオロキノロン系
抗菌点眼薬が第一選択薬となり,グラム陰性桿菌に対しては,アミノグリコ
シド系およびフルオロキノロン系抗菌点眼薬が第一選択薬になるなど,グラ
ム陽性菌とグラム陰性菌とでは選択する抗菌薬の種類が異なる。眼感染症の
診断のための微生物学的検査には,塗抹標本検査と細菌分離培養検査とがあ
る。病巣擦過物や眼脂の塗抹標本検査(グラム染色)は,治療の方向性を迅
速に決定するための重要な検査法であるといえる。しかし,塗抹標本検査の
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感染症治療薬