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合意率:93.8%(15/16人)Ⅰ.症状・疾患Answer有効な可能性がある。推奨レベル:2エビデンスレベル:++-- 解 説102  CQ101 関節痛に対しHRTは有効か? 関節痛は更年期に認められやすい症状の一つとして取り上げられてきたが,従来のコホート研究では,明らかなエストロゲン低下・欠落症状との関連,エストロゲン投与が効果的であるかどうかの結論は出ていない1)。45~55歳の2,001例のメルボルン在住の女性で健康状態などを聞き取り調査したコホート研究では,関節痛,関節の硬化症状の訴えは51.7%と最も多く,かつ関節炎と診断されている女性は,閉経後では閉経前に比べて有意に多く(それぞれ39%,27%,p<0.001),関節炎症状と関連のある因子として高年齢(OR:1.09[1.05‒1.13]),高BMI(1.04[1.02‒1.07]),強いうつ状態(1.80[1.13‒2.87]),性欲減退(1.58[1.26‒1.97])とともに閉経(1.88[1.33‒2.66])が指摘されている2)。医原性閉経でも関節炎の発症率には有意差が認められ3),アロマターゼ阻害薬関連の関節痛リスクは,最終月経5年以内の女性で高く4),エストロゲン低下・欠落症状と関節痛との関連はあるものと考えられる。米国の民間保険登録者で変形性関節症(osteoar-thritis:OA)と診断された手指,膝,股関節OAの発症を調べた報告5)では,いずれも50歳くらいで増加するが,この年代を境に最も増加するのは手指OAであり,手指関節がエストロゲン低下の影響を受けやすい関節と考えられる。 HRTによる改善効果については,横断的研究として,53~54歳のスウェーデン女性1,760例において性器萎縮以外の更年期症状の頻度を調べているが,閉経後においてHRTの有無により,また同年代において月経の有無により関節痛の頻度に有意差は認めていない6)。診断されたOAとHRTとの関連を調べている大規模な横断的研究では,手指OA発症においてHRT期間5年未満の群についてのみではあるが,ヘバーデン結節の発症頻度,手指OAの重症例の有意な増加を認めている7)。また,1年以上のHRTで手指OAの診断基準を満たしやすい傾向も報告されている8)。 一方,WHIの解析からは,ベースラインで有意差がなく,EPTで1年後有意な改善を認めた症状としてホットフラッシュ,寝汗,腟外陰部乾燥感とともに関節痛・硬化(1.43[1.24‒1.64]),身体疼痛(1.25[1.08‒1.44])があり,新たな筋骨格系症状発現を抑制している9)。ETについてもWHIのサブ解析で関節症状についての評価がされており,ベースラインでプラセボ群と有意差がなかった関節痛や関節腫脹が,CEE投与1年後には関節痛発症の頻度と疼痛の程度でプラセボ群に比較して有意な改善を認め,3年後も同様の結果であったと報告されているが,関節腫脹の発症はCEEで有意に高いという結果であった10)。WHIよりも若い集団である50~69歳までの閉経後女性3,721例を対象としたWISDOM研究では,健康関連QOLと更年期症状に対する効果を1年間調べているが,有意な改善を認めたものは,ホットフラッシュ,寝汗,関節痛,不眠,性器乾燥感であり,ここでも関節痛へのHRTの効果が確認されている11)。101CQ関節痛に対しHRTは有効か?

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