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1更年期障害1. 経口もしくは経皮エストロゲンは血管運動神経症状を緩和する。2. CEEは血管運動神経症状以外に,寝汗,性機能障害,不眠,腟乾燥感,記憶力低下,頻尿,ある種の精神的症状,更年期症状に関連したQOLを改善する。3. E2は血管運動神経症状以外に睡眠障害,関節痛,四肢痛改善効果も示す。解 説14  1‒1)更年期障害 更年期障害の代表的な症状であるホットフラッシュなどの血管運動神経症状(vasomotor symptoms:VMS)は,睡眠の質の低下,易怒性,集中力低下,QOL低下と関連している1,2)。VMSは心血管系疾患や認知機能障害の危険因子にもなる3,4)。また,様々な人種や月経状態においても,2週間に6日以上の頻度のVMSを認める期間は平均7.4年との報告もある5)。 1 . 経口HRTを3カ月~3年の期間施行した24の二重盲検対照試験(参加者総数3,329例)のメタ解析の結果では,VMSはプラセボ群に比べ1週間の発現回数で75%減少,症状の強さは1/10程度となり,ともに有意な改善であった。乳房痛,浮腫などの有害事象はHRT群で有意に増えたが,そのためにHRT群において薬剤を中止した症例数の増加は,プラセボ群に比して有意ではなかった。他方,プラセボ群で効果がないため中止した症例数の増加は,HRT群に比べて有意であった6)。VMSを有する症例へのCEEまたは経皮E2投与の効果を3カ月以上観察した14報告のメタ解析では,CEE 0.3~1.25 mg/日,経口E2 0.5~2.0 mg/日,経皮E2 0.02~0.1 mg/日(放出量)の投与群において薬剤の種類,投与方法,投与量によらず,VMSの回数はプラセボ群に比べ有意に減少したが,薬剤間の効果に有意差は認めなかった7)。経皮E2投与のVMSへの効果は,通常量の約30%の低用量〔0.014 mg/日(放出量)〕でも期待できることが報告8)されている。経皮E2の投与法の比較では,閉経後女性120例をE2のゲル製剤,貼付剤に無作為割付し,ジドロゲステロンとともに12カ月間周期的投与した研究において,両群ともに投与1週間で投与前に比べて有意にVMSが改善した9)。E3の効果については,更年期症状を有する自然閉経後もしくは外科的閉経後の53例にE3(2 mg/日)を経口投与し,症状の推移をKupperman更年期指数で観察した研究がある。投与前に比べ,投与後1カ月よりKupperman更年期指数の有意な改善を認めている10)。HRTは更年期症状としての中等度以上のVMS治療の第一選択として認識されている。HRTの中止で,約50%の女性にVMSが再発すると言われている11,12)。 2 . CEEのVMS以外の症状への効果に関しては,中等度以上の更年期症状を有する125例(中等度61例,重度64例)を無作為割付し,CEE 1.25 mg/日投与の更年期症状改善効果を観察したクロスオーバー研究の報告がある。重度の更年期症状を有する群では,VMS以外にも不眠,腟乾燥感,記憶力低下,頻尿,精神的症状(イライラ感,不安,年齢や自分に対する煩わしさ,気分の不快感など)に対し有意な改善効果を認めた。中等度障害例でも同様の改善効果を認めたが,前述の精神的症状の改善傾向についてはプラセボ群との間に有意差は認められなかった13)。50~69歳の子宮を有する閉経後女性3,721例を総論1HRTに期待される作用・効果

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