3診断12 3. 診断[症状][進展様式]卵巣癌のリスクを上昇させる因子として未産,肥満,排卵誘発薬の使用,ホルモン補充療法などが報告されている。また婦人科疾患として骨盤内炎症性疾患,多嚢胞性卵巣症候群,子宮内膜症などがある。逆にリスクを低下させる因子として経口避妊薬の使用がある。遺伝性の卵巣癌もよく知られており,乳癌をはじめとする他臓器悪性腫瘍の治療歴,家系内の腫瘍既往歴についても注意を払う必要がある。従来,卵巣癌と診断されていた症例の約半数が進行例として発見されており,無症状のうちに進行している場合が多い。初発症状としては,腹部腫瘤や腹部膨満感,これに伴う周囲臓器への圧迫症状,排便・排尿障害,腹痛,摂食困難,月経不順や不正性器出血などを主訴として受診することもある。卵巣腫瘍の種類による好発年齢を考慮することも重要である。腹膜癌も卵巣癌と同様に無症状のうちに進行している場合が多い。再発時の症状として最も頻度が高いのは癌性腹膜炎による腹部膨満であり,重症化すると腸閉塞症状を来す。その他に肺転移による呼吸困難,骨転移による疼痛などがあり,転移部位に対応した症状に注意を要する。卵巣癌・卵管癌・腹膜癌は,婦人科悪性腫瘍のなかで最も致死率の高い疾患であり,その理由は,自覚症状に乏しく,腹腔内に広く進展した状態になってはじめて診断されることが多いためである。卵巣癌・卵管癌は腹腔内進展,後腹膜進展を来すことが多く,進展様式を理解した上での治療が望まれる。卵巣・卵管から近接臓器(子宮,膀胱,直腸,S状結腸)へ直接進展する一方,骨盤内の膀胱子宮窩腹膜やダグラス窩腹膜に播種を生じやすい。さらに,腹水貯留を来しやすく,腹水中に浮遊する腫瘍細胞は,呼吸運動や腸管運動によって腹腔内を循環し,大網,肝周囲の横隔膜,小腸間膜の漿膜面等に広く播種性転移を来す。さらに,腹膜癌を含めた腹膜病変は直接,腹膜や大網のリンパ管に浸潤して後腹膜リンパ節へ転移する。卵巣・卵管からのリンパ流は卵巣間膜で子宮からのリンパ流と合流してリンパ網を形成する。卵巣静脈に沿って腎下部で高位の傍大動脈リンパ節に流入するとともに,子宮に沿って骨盤リンパ節へ流入することで骨盤・傍大動脈の後腹膜リンパ節に転移する。他癌種のように血管に直接浸潤して血行性転移を来すことは少ないが,後腹膜リンパ節へ転移を来した後に左鎖骨下静脈や胸管を介して全身循環に入ると肺,肝,脳,骨にa.リスク因子・症状[リスク因子]
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