30146T
7/12

4■第1章 総 説1)子宮の超音波所見進行子宮内膜症では,直腸と子宮の癒着のためダグラス窩の閉鎖が生じる。このため,子宮は後傾後屈のことが多い。また,ダグラス窩周囲の深部子宮内膜症は子宮後壁の子宮腺筋症と連続していることがあり,子宮後壁の子宮腺筋症を手掛かりに深部子宮内膜症が診断できる場合もある。2)卵巣子宮内膜症性嚢胞の超音波所見経腟超音波断層法では,内部エコーのみならず嚢胞の辺縁や輪郭の解像度が向上し,壁の厚さや不整,さらに周辺組織との癒着の判定も,より正確に行えるようになってきた。嚢胞内の貯留血液は陳旧性のものが多く,また不規則な凝血塊やヘモジデリン沈着を起こしているものがあり注意深い観察を要する。卵巣子宮内膜症性嚢胞の中には,卵巣成熟奇形腫や卵巣癌との鑑別が困難な症例も多く存在し,超音波診断のみでの確実な鑑別は容易ではない。a)嚢胞の位置卵巣子宮内膜症性嚢胞の超音波所見は,ほぼ円形もしくは楕円形の単房または多房性嚢腫として認められ,子宮に密着して子宮の後方,またはダグラス窩に位置することが多い(図1)。超音波断層法は,子宮内膜症の診断や経過把握の手段として重要視されている。一般に経腟超音波断層法が経腹超音波断層法に比べて骨盤内病変の描出に優れているため,経腟超音波断層法を優先する。しかしながら,性交未経験の場合は経腹超音波断層法を行うか,もしくは経腟プローブを用いて経直腸で超音波断層法を行う。子宮内膜症の存在を疑って超音波断層法を行う際には,まず骨盤内全体について一定の手順で観察し,その後に細部を観察するなど工夫をするとよい。以下に例を挙げる。まず,子宮と卵巣をざっと観察して子宮腺筋症や卵巣子宮内膜症性嚢胞が存在するかを確認する。次に,子宮内膜症病変そのものではないが子宮内膜症に関連する癒着などの所見の有無を調べる。すなわち,部位特異的疼痛の有無,卵巣の可動性の有無,子宮と周囲臓器との滑りの有無などを調べる。最後に必要に応じて,子宮の前後の深部子宮内膜症の評価をする。3 血液生化学検査子宮内膜症診断には優れたバイオマーカーがないが,CA125,CA19-9は子宮内膜症症例において軽度上昇していることが多い1)。単独では診断の精度は高くないが,他の所見と組み合わせることにより診断に有用である。卵巣子宮内膜症性嚢胞の出血の急性期や破裂では,一時的に急激な上昇がみられることがある。CA125,CA19-9ともに初期の子宮内膜症では陽性となることが少なく,進行症例においてのみ有用である2,3)。近年は,上皮性卵巣癌と卵巣子宮内膜症性嚢胞の鑑別においては,血清CA125に加えて血清HE4が有用であるとする報告が多い4)。4 画像診断a子宮内膜症の超音波所見

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る