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1.診 断■3察が重要である。子宮内膜症病巣が存在する場合は,腟壁にとどまっているのか,ダグラス窩の深部子宮内膜症と連続しているのかを,他の方法を併用して鑑別する。次に内診においては,子宮・卵巣の大きさ・性状・可動性などのほか,内診時の疼痛の有無やダグラス窩周囲の硬結が重要な所見となる。一般的には内診時に経腟超音波断層法を施行するが,この際に超音波プローブによる圧痛の有無を聴取しながら観察することは病変の同定の補助となる。直腸の子宮内膜症が疑われる場合には,積極的に直腸診を併用して腸管壁の状態を確認する。ただし,性交未経験者や若年者などで内診や直腸診が施行困難な場合は,他の検査の情報を参考に診断を進める。MRI検査では,さらに詳細な病変の情報が得られる。血清CA125は必要に応じて,悪性腫瘍との鑑別や病変の活動性の評価のために,他の検査所見と合わせて補助的に使用する。表1 子宮内膜症の症状・骨盤痛月経痛(月経困難症),性交痛,下腹部痛,腰痛・月経異常過多月経,月経不順,不正性器出血・不妊・消化器症状腹痛,排便痛,下血,便秘,下痢・尿路症状頻尿,排尿痛,血尿・呼吸器症状診断各論1 自覚所見子宮内膜症の症状としては,月経時の下腹部痛や腰痛などの月経痛と不妊が挙げられる。確定診断された子宮内膜症患者を対象とした日本子宮内膜症協会の調査では,月経痛は88%にみられ,月経時以外の下腹部痛,腰痛,性交痛,排便痛といった疼痛症状の頻度が高い。不妊を訴えるものは,およそ半数に存在した。頻度は高くないが,病変が骨盤内臓器以外に広がった場合は,消化器,尿路あるいは呼吸器症状などがあらわれる(表1)。2 内診所見と直腸診所見子宮内膜症病変と二次的に生じる癒着病変はダグラス窩および付属器周辺に多いことから,本症の内診所見は特徴的なものとなる。子宮可動性の制限,子宮後屈,圧痛,ダグラス窩硬結などが子宮内膜症を疑わせる所見である。直腸腟子宮内膜症の診断においては,直腸診が重要である。小腫瘤を形成したダグラス窩病変が線維化して,圧痛を伴う硬結として触れることがあるが,これは直腸診によってより明瞭に触知される。

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