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1.更年期外来の実際 449表1 更年期外来の目的1.更年期健診,更年期相談2.更年期障害の治療3.骨粗鬆症の予防と治療4.‌‌更年期からの健康管理更年期外来の実際として,更年期健診は重要な項目を占めている(表2)。a.問診,更年期指数健診のみの来院であれば,問診はそれほど必要ではないが,更年期障害などの症状,特にうつ気分などの精神症状が中心の場合は十分に話を聞く必要がある。初診のみでなく,数回に分けてよいが,単に10分,15分の問診時間では症状の把握,診断は非常に困難である。問診は単に話を聞いているだけではなく,目的意識をもち,整理しながら聞く姿勢が重要である。目安としては,初診時の問診は30〜40分,再診は30分以内,数回の診察で診断および今後の方向性についての判断は可能と思われる。更年期症状の把握は面倒なものであるが,経過を追うため,客観性をもたせるために更年期指数を用いる。指数は詳しすぎると実際の臨床では用いられないため,数分間位で採点できるものがよい。b.身体測定身長,体重,BMI,体脂肪,腹囲,血圧などを測定する。血圧が高い場合は安静時,または自宅にての起床時などを測定して診断する。最近では,電気抵抗性を利用した簡単な装置で内臓脂肪,筋肉量,水分量などを測定することができ,健康度,加齢の指標として用いられている。c.婦人科検診細胞診による子宮頸がん,体がん検診および超音波による子宮筋腫,卵巣腫瘍の有無の検査などを実施する。老年期女性で子宮頸部が萎縮して硬くなり,子宮内膜細胞診が実施困難な場合にもしばしば遭遇する。そのような場合は不正出血などの臨床症状がなければ,可能な範囲で実施して,超音波などの所見と併せて総合的に診断する。d.乳がん検診触診とマンモグラフィ,触診と超音波が原則である。特に所見がなければ,2年に1回の検診が推奨されている。HRT実施中は少なくとも1年以内に1回は実施する。e.血液検査貧血,肝機能,腎機能,脂質,血糖などの一般検査の他に,閉経前後はエストラジオール,FSHを測定し,卵巣機能推定の参考とする。f.骨密度測定DXA法(X線)による腰椎,大腿骨頚部,前腕骨の測定が一般に実施される。骨粗鬆症と診断する場合は2カ所以上測定するのがよい。治療としては,『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』に従う。更年期外来においては,食事,QOLの維持,向上表2 更年期健診1.問診,更年期指数2.身体測定3.‌‌婦人科検診‌子宮頸がん,体がん4.乳がん検診5.血液検査6.骨密度測定7.健康相談表3 更年期外来の問題点1.健康管理,予防医療のシステムが不十分2.話を十分に聞き,説明する習慣があまりない3.各論的な臓器別の診断,治療に片寄りがち4.医療保険制度の枠外の領域が多い5.受け入れ体制が足りない

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