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更年期障害の治療では,単にホルモン補充療法(HRT),漢方薬を処方するだけでなく,なぜそのような症状が出現したかを患者と一緒に考え,対応する。「眠れないので睡眠薬」,「めまいにはめまい止め」,「動悸には不整脈の薬」などの対症療法薬による治療は,どうしても必要なときにのみ用いることが基本である。骨粗鬆症の予防と治療についても,更年期外来ではまず骨量を測定することから始める。予防が中心であり,生活習慣の改善とともに減少が認められた場合は必要に応じて薬物治療も行う。更年期からの健康管理は,生きている限りは健康で自立した生活を目標としており,幅広い助言を医学面から行う。すなわち,年に1回更年期健診を行い,結果に基づいて助言することも,この外来の重要な役目である。また,HRTを適切な管理の下に5年,10年と投与し,エストロゲン欠乏による症状を和らげることも予防医学,健康増進の立場から,この外来の領域である 3)。❷ 更年期外来の実際更年期外来は,現在は婦人科の外来の一部門として運営されている所が多い。本来は婦人科のみでなく,内科,整形外科,精神科,泌尿器科,歯科や,食事,運動,カウンセリングの専門家たちと協力して運営していくことが基本である。わが国の医療はほとんど健康保険制度により運営されており,疾病の治療が中心となっている。そのため,更年期外来のように,病気にならないよう健康を維持していくことも含めた領域(例:骨量減少や動脈硬化を早くから予防する)も対象としている場合は,医療保険制度内ではカバーすることが困難といえる。現在の病気の発見のための検査,直ちにその治療となると,本来の更年期外来とはいえず,知恵を出し合う必要があろう。すなわち,相談機能,インフォームド・コンセントを十分にとるだけの余裕をもった診療体制などを,どのようにして実現していくかが重要である。CQ更年期外来とは? 更年期外来の運営にはどのような74更年期外来は1990年頃から大学附属病院を中心として設けられ始め,現在は個人クリニックも含め全国的に普及している。更年期障害,骨粗鬆症治療外来として運営されている場合が多いが,本来は更年期前後からその女性の生涯にかけての健康管理が目的である。2000年代前半には性差医療の考えに基づく女性外来が普及しはじめ,概念が似ているところから一緒に運営する施設も出現している。❶ 更年期外来の目的目的について表1に示した。更年期は人生の折り返し点といわれるが,後半の40年余りをいかに上手に過ごすかを健康面から評価することは重要である。更年期健診は,検査結果が単に正常か異常かをみるだけでなく,その後の人生を健康に過ごすためには現在の結果がどのような意味をもっているかを総合的に判断し,解説することも含まれている 1,2)。工夫が必要か?更年期外来の実際1

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