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450 第Ⅵ章 ヘルスケア2) 水沼英樹:QOLからみた更年期女性のトータルヘルスケア.産婦人科治療 93:8-14,2006(レベルⅣ)3) 小山嵩夫:中高年女性のニーズからみた婦人科医療のあり方.産婦人科治療 98:932-935,2009(レベルⅣ)運動も含めた対応をする 4)。g.健康相談長期的な健康管理,QOLの維持改善,向上を目的として,患者の要望を聞き,その対策を一緒に考える。わが国では,このようなことを行う部門はないが,潜在的な需要が予測され,国民への啓発が進めば相談者は増加するであろう。❸ 今後の展望既に述べたように,更年期外来は更年期障害,骨粗鬆症などの治療を目的として実施されている場合が多く,本来の目的である更年期からの健康管理,さらに進んで健康増進として実施されるには至っていない。また,医療者,患者側ともこの本来の目的を理解していない場合も多く,この概念の啓発活動が重要である。更年期外来の問題点を表3に記した。まず,予防医療,生活指導中心,十分に話ができる診療体制など,現在の医療保険制度にそぐわない部分が多い。医師は患者に対して短時間で必要な検査,診断を行い,処方,処置をする医療システムに慣れきっている。更年期外来で期待されているような,十分に話を聞き,臓器別ではなく総合的,全身的に考えるシステムは一般的ではなく,とまどいを感じることが多いであろう。余裕のある診療システムをつくったとしても国民の理解が十分ではない現状では医療経営的には成立が難しく,その費用を誰が負担するのかという問題も重要である。患者は医療費の3割負担に慣れており,全額自費ということも現実問題としては非常に難しいと思われる。更年期外来の概念が理解され,需要が出現し始めたとしても,その受け皿の問題も存在する。医療者側にこの概念を理解してもらい,技術を習得してもらうためには再教育が必須であろう 5)。❹ まとめ更年期外来は学問的にはその概念,構想はほぼ完成しているといえるが,臨床との隔たりは大きい。この隔たりは学問的のみならず,医学教育,医療制度,国民への啓発活動とも深く関係しており,一朝一夕には解決しない問題でもある。しかし将来,この外来が実現されれば,更年期からのQOLの改善,向上に大きな進展を与えることが予想される。まず,国民の理解を得ることから始めることが重要である。●文献1) Notelovitz M:Is there a need for menopause clin-ics? Ann N Y Acad Sci 592:239-241, 1990(レベルⅣ)[PMID:2375585]4) Notelovitz M:Integrated adult women’s medi-cine:A model for women’s Healthcare Centers. In Treatment of the postmenopausal women. Lobo RA, ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadel-phia, 1999, pp621-628(レベルⅣ)5) Eggert RW, Perkinson MD:Preventive medicine and health system reform. Improving physician education, training and practice. JAMA 272:688-693, 1994(レベルⅢ)[PMID:8064984]

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