卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約

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理学的に特異な像を示すため,明確に記述することが望
ましい。

微小浸潤

 卵巣腫瘍では,単に浸潤とは「明らかな浸潤frank
invasion」を指すことが多く,「微小浸潤microinva-
sion」との違いに留意する必要がある。微小浸潤は浸潤
巣の大きさが5mmに満たないものをいい(従来は
10mm

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未満),浸潤巣の個数は問わず,また,それら

の総計による評価はしない。明らかな浸潤とは微小浸潤
の域をこえるものをいう。このような微小浸潤は境界悪
性腫瘍の所見の一部でもある。ただし,微小浸潤はこれ
までは漿液性腫瘍に限定して診断されてきたが,WHO
分類(2014)では,粘液性腫瘍および類内膜腫瘍にも
当てはめることになった。なお,婦人科領域以外の腫瘍
では,

“微小”ではなく“微少”が用いられていることに

も留意されたい。

浸潤様式

 浸潤には,癒合/圧排性confluent/expansileと侵入
性infiltrativeの代表的な2つの様式がある。前者は,悪
性の腫瘍細胞が主として管状に増殖し,ほとんど胞巣間
に間質の介在を伴わず,周囲の間質との境界が明瞭かつ
平滑な浸潤様式で,悪性の根拠とされる。ただし,粘液
性腫瘍や類内膜腫瘍では,その範囲が小さい場合に上皮
内癌を伴う境界悪性腫瘍との判別が困難なことがあるた
め,本取扱い規約ではWHO分類(2014)の微小浸潤
の定義に従って5mm以上の範囲である場合に癒合/圧
排性浸潤と解釈し,悪性とする。