梅毒

妊婦を含む

B.疾患別 性感染症診療の実際

❖細菌感染症

2

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1

 概 要

a

疫 学

梅毒はTreponema pallidumによる慢性感染症である。主要な
感染経路としては,性的接触による水平感染および妊婦から胎児へ
の垂直感染(出生児の先天性感染)の2つがある。

梅毒の起源として,昔から地中海沿岸に存在したトレポネーマの変
異で強毒性を獲得した説と新大陸起源説がある。15世紀以前の
ヨーロッパ古人骨に梅毒は検出されず,最近のゲノム解析でも16
世紀にコロンブスが持ち帰ったとする新大陸起源説が有力である。

現在,途上国を中心に毎年世界で1,200万人以上の新規感染があ
る。南アジア,東南アジア,アフリカが多く,貧困や薬物乱用,売
春など社会経済的要素が関与する。

過去10年間,中国が梅毒の新たな猖

しょう

けつ

地域として問題となって

おり,マクロライド耐性のクローンが増加している。

日本では2010年以降増加傾向にあり,男性同性愛者に加えて,特
に異性間性交渉による若年女性の感染が増加している(

図2

)。

b

梅毒の感染の病態

成人における梅毒感染の経路は,性的接触すなわち粘膜や皮膚の病