Ⅵ 一期的子宮摘出術の実際
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VI
一期的子宮摘出術の実際
術式の概要
❶
子宮筋層縫合
子宮底部を大きなガーゼ(ミクリッツガーゼ)で覆い,助手に子宮を牽引させながら,太めの
糸で速やかに子宮筋切開創を縫合する。縫合する余裕すらない場合には,助手は子宮を圧迫した
まま把持・牽引する。
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図41, 42
❷
両側子宮円靱帯・両側卵巣固有靱帯・卵管の切断
妊娠子宮は血管が怒張しており,血流も豊富である。挟鉗・切断・結紮の各操作を確実に行う。
両側子宮円靱帯を結紮・切断し,両側卵巣固有靱帯および卵管を切断する。
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図43
❸
膀胱子宮窩腹膜切開
子宮広間膜前葉を膀胱付近まで切開し,膀胱子宮窩腹膜を切開する。このとき,可能であれば
子宮頸部から膀胱を剝離するが,前置癒着胎盤症例で膀胱剝離が危険であると判断した場合は,
膀胱剝離に固執せず,後方操作に移行する。
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図44, 45
❹
ダグラス窩腹膜開放と子宮の双手診
ダグラス窩腹膜を開放し,ダグラス窩に手を入れて子宮を後方から挙上すると,摘出すべき子
宮の全体像がイメージできる。ダグラス窩を開放する余裕がない場合も,子宮全体を手の中に収
めて,子宮摘出を完遂させるためのイメージを掴む。
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図46
❺
子宮広間膜後葉切開
子宮広間膜後葉を仙骨子宮靱帯の子宮付着側部に向かって剝離を進める。手指で尿管を確認し
ながら,子宮側に向かい切開する。
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図47
❻
子宮傍結合織の処理
疎な子宮傍結合織を処理すると怒張した血管が露わになる。切断する側の反対頭側上方に子宮を牽
引するが,ダグラス窩に挿入した手を用いて反対側への牽引をより強くするとよい。
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図48, 49
❼
子宮頸部と腟円蓋部の確認
手順
❸
において膀胱剝離を行わなかった場合は,子宮後方に挿入した手指であらためて子宮頸
部と腟円蓋部を確認する。
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図50
❽
子宮動静脈・基靱帯・仙骨子宮靱帯の切断
基靱帯上部の子宮動静脈を含む切断可能な部分を切断する。基靱帯の切断は,無理をせずに複
数回に分けて行う。その後,仙骨子宮靱帯を切断する。
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図51, 52
❾
膀胱剝離
子宮を頭側に強く牽引しながら,癒着の程度の弱いところから膀胱の剝離操作を進める。癒着
が高度な部分の剝離を行うときは,膀胱損傷を恐れない。
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図53
❿
子宮摘出
尿管を触診で確認しながら,腟管を切断し子宮を摘出する。腟管は単結節縫合とする。
➡
図
54, 55
閉創に移る前に,膀胱内にインジゴカルミン液を注入し,膀胱損傷の有無を確認する。膀胱損
傷時は,吸収糸で修復する。
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