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2. 切除・摘出検体の取扱い
a.固定
検体は術後速やかに固定する。固定時には,適宜入割し,大きさに余裕のある広口容器
に入れ,検体全体が浸かる十分量の固定液に浸漬する。固定液は,10%ないし20%中性
緩衝ホルマリン液が推奨される。子宮や腸管は入割後,コルク板などに張り付けて固定液
に浸漬する。
b.肉眼観察と切り出し
①大きさ・重量,②被膜面の所見や周囲臓器との関係,③割面や内容物の性状,④卵管
の状態,⑤病巣が片側性の場合は,対側卵巣,また合併切除された臓器の性状などを観察
して記録する。
切り出すブロックの数については,切除時の腫瘍最大径1〜2
cmあたり1個を目安と
するが(術者は摘出時の腫瘍最大径を申し込み用紙に記載する),肉眼所見や推測される
組織型によっても異なり,個々の症例ごとに柔軟な対応が必要である。割面の写真やコ
ピーは,組織所見との対比のために重要である。
1.一般的注意事項
① 被膜面を観察し,破綻あるいは腫瘍の被膜表面への露出や直下への浸潤が疑われる部分,
癒着の有無を確認する。所見がある部分は切り出しの対象となるので,インクなどで印
をつけておくとよい。
②卵管を確認し,特に卵管采まで走行が追えるかも含めて観察する。
③腫瘍の最大割面に平行に,1〜2
cmの間隔で入割した面を観察する。
④ 腫瘍の最大割面を中心に肉眼的に異なる所見を呈する部分を,上記の目安を参考に切り
出す。
⑤ 被膜破綻あるいは被膜表面への露出や直下への浸潤が疑われる部分,癒着痕とみられる
部分を切り出す。
⑥ 悪性腫瘍,特に高異型度漿液性癌が考えられる症例では,両側の卵管(卵管采)を全
割・全包埋し標本を作製することが望ましい。この際,卵管本体は卵管の短軸に沿って,
卵管采は長軸方向に分割する
(図1)
。
⑦⑥に従った卵管の標本作製が行われない場合は,腫瘍と卵管をともに含むブロックを切り出す。
⑧ 同時に摘出された臓器を切り出す。対側卵巣に肉眼的病巣がない場合でも,顕微鏡的病
巣が認められることがあるため必ず切り出す。
⑨ 組織標本を鏡検後,追加切り出しが必要なことがある。例えば,組織型の決定が難しい
腫瘍,浸潤の有無の判断に迷う例では,追加切り出しにより定型像が得られることがある。
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切除・摘出検体の取扱い