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依然として有用である。ただし,炎症による偽陽性や溶骨型の骨転移例での偽陰性もあ
るため注意が必要である。
[その他の画像診断]
◦消化管内視鏡,注腸造影
悪性腫瘍が疑われる場合,下部消化管のスクリーニングや腫瘍の大腸粘膜浸潤の有無
を確認する目的で,術前に下部消化管内視鏡検査を行う必要がある。進行期分類
(FIGO2014,日産婦2014)では消化管の部位に関係なく粘膜浸潤があればⅣB期とさ
れる。高齢や全身状態が不良の場合は注腸造影で代用される場合もある。注腸造影では
腸管の伸展性がわかるため,腫瘍と腸管の癒着や漿膜浸潤の有無が推定できる場合もあ
る。消化管由来の転移性腫瘍が疑われる場合は,原発巣の検索目的に行う。
◦尿路の画像診断
悪性腫瘍が疑われる場合,膀胱粘膜の浸潤を否定しておくために膀胱鏡検査が行われ
る。巨大腫瘍や播種を伴っている場合,腎盂尿管の造影検査を行い尿管の走行や尿の排
泄遅延の有無を確認しておく。
e.腹腔鏡
初発時または再発時の腹腔内観察,腹水採取および病巣の組織採取を目的とした腹腔鏡
検査は,治療方針を決定するのに有用なことがある。
f.細胞学的診断
[術前]
① 腹水が貯留している場合には腹壁穿刺,ダグラス窩穿刺などにより得られた液状検
体中に含まれる腫瘍細胞により,組織型,悪性度の推定が可能となることがある。
② 液状検体からセルブロックを作製することが可能である。
③ 腟・子宮頸部細胞診,子宮内膜細胞診で卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に由来する腫瘍細
胞が証明されることがある。すなわち,子宮内膜の組織診で異常がない場合でも子
宮内膜細胞診で腫瘍細胞が検出されることがある。細胞の出現様式,画像所見など
を勘案することによって卵巣癌・卵管癌・腹膜癌が疑われることもある。
④ 閉経後2年以上の女性の腟細胞診でmaturationindex(MI)の右方移動(エストロ
ゲン効果)が著明な場合,エストロゲン産生性の卵巣腫瘍を疑う。エストロゲン産
生性卵巣腫瘍の多くは顆粒膜細胞腫であるが,上皮性の卵巣腫瘍がエストロゲンを
産生することもある(機能性間質を有する卵巣腫瘍)。
[術中]
腫瘍表面や腹腔内各部位の擦過細胞診,腹水細胞診あるいは腹腔洗浄細胞診により腫
瘍細胞の有無を確認する。悪性・境界悪性腫瘍に由来する異型細胞が認められた場合に
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