5章Toxic Shock Syndrome(TSS)Toxic Shock Syndrome(TSS)は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:S. aureus)による,まれではあるが多臓器障害を合併する重篤な疾患である。黄色ブドウ球菌が産生する外毒素がT細胞を活性化し炎症性サイトカインが大量に放出されることによって引き起こされる。手術,熱傷,外傷,蜂窩織炎などの創傷感染からも発症するので,日常診療において遭遇する。高熱,紅班,嘔吐,下痢,筋肉痛などの症状が急速に出現し,ショックへと移行する。そのため,局所処置,抗生剤投与,全身管理など早急に適切な対応が求められる。多彩な臨床症状を用いた診断基準が米国CDCより提示されており,2011年に若干の改訂がなされている。参考として以下に記載する。この診断基準の6項目すべてを満たすものをconfi rmed TSS,5項目を満たすものをprobable TSSとする1)。しかし,この診断基準は疫学的調査の目的で作成されたものであり,この診断基準を満たさないからといって,TSSを否定してはならない。センタイル値を下回るもの。高倍率視野で5個以上の白血球を認めるもの(尿路感染のない場合に限る)は意識障害を認めるもの米国CDCによるTSSの診断基準1.発熱:体温≧38.9℃2.発疹:びまん性の斑状紅皮症3.落屑:通常,発症より1〜2週間でみられる。手掌・足底に顕著。4. 血圧低下:成人では収縮期血圧≦90mmHg,16歳以下の小児では各年齢での血圧の5パー5.多臓器障害:以下の項目のうち3つ以上あてはまるものがある。 ①消化管:発症時における嘔吐あるいは下痢 ②筋:重篤な筋痛あるいは,正常値上限の2倍以上のCPK上昇 ③粘膜:腟・口腔咽頭あるいは結膜の充血 ④腎: 正常値上限の2倍以上の血中BUNまたはCreの上昇,または,尿沈渣所見において ⑤肝:血清T-Bil,AST,ALTいずれかの,正常値上限の2倍以上の上昇を認めるもの ⑥血液:血小板数<10万/mm3 ⑦ 中枢神経系:発熱や血圧低下のないときの観察で,神経学的巣症状がなく失見当識あるい6.その他:以下の検査を行った場合,その結果が陰性であること ①血液,脳脊髄液での培養(ただし,血液培養でS. aureusが検出されてもよい) ②ロッキー山紅斑熱,レプトスピラ症,麻疹の血清学的検査Confi rmed TSS:落屑を生じる前に死亡した場合を除き,落屑を含めて上記6項目のすべてを満たすものProbable TSS:上記6項目のうち5項目を満たすものはじめに
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