治療法各Ⅱ た11, 12)。また一方的な知識の提供だけでなく,患者サロンや膵がん教室での講演後にフリー 論PC1 311 患者・家族の知識の改善に関しては,堂谷らによる患者 33 名と介護者 50 名を対象とした前向き観察研究5)を検証した。10 項目の膵癌に関する設問に対し,膵がん教室への参加前後で回答の正誤を評価し,正答数(中央値±標準偏差)は,患者:6±2.2 から 8±1.8(p<0.01),介護者:7±2.4 から 9±1.9(p<0.01)と有意に改善していた。 患者・家族の気持ちのつらさの軽減に関しては,2 件の前向き観察研究を検証した。前述の堂谷らの研究5)で,膵がん教室への参加前後で気持ちのつらさを 11 段階で評価し(0:つらさはない~10:最高につらい),つらさの程度(中央値±標準偏差)は患者:4.5±2.4 から4±2.3(p<0.05),介護者:5±2.5 から 5±2.2(p<0.01)と有意に改善していた。Yanai らによる患者 42 名と介護者 27 名を対象とした前向き観察研究6)では,膵がん患者サロンへの参加前後で心理状態について Profile of Mood States7, 8)を用いて評価し,混乱・抑うつ・不安に関して患者・介護者とも有意に改善を認めた。 以上より膵がん教室あるいは膵がん患者サロンへの参加は,患者・家族などの介護者にとって有用であると考えられた。ただし,検証可能な報告が症例対象研究のみで 2 件と少ないこと,膵癌のみでなく胆道癌も対象に含まれることなどを踏まえ,ステートメントは提案に留め,前向き研究だったことからエビデンスの強さは C とした。 膵がん教室・患者サロンに関する既報9‒12)によれば,わが国では膵がん教室は数回に分けて行われ,施設内の医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・社会福祉士・臨床心理士・理学療法士など多職種が講師・スタッフとして参加していた。また,アンケートを行い次回以降の内容に役立てていた。膵がん教室や患者サロンに参加することへの害に関して,疲労や気持ちのつらさの増加が懸念されていたが,実際の参加者へのアンケートでも,一部に希望する内容と開催された内容が合致しなかった,かえって不安が高まった,といった意見も聞かれた。これは,参加者の背景(病状の進行度など)が異なることや,情報提供に対するニーズが異なるためと考えられた。これに関しては開催施設によっては対象を術前補助化学療法患者は含めない,治療開始前あるいは化学療法開始半年以内に限定するなど,ある程度疑問や不安が共通している患者で揃えるなどの工夫がなされていた。 その他のアンケートではおおむね良好な反応・効果を認めており,参加者が高い満足度を得られたとの報告や5, 6, 10, 11),参加後に患者の治療意欲が向上するなどの報告がみられトークの時間を設けることで他の参加者と知識・体験を共有できることが有用とのアンケート結果も認められた9, 10)。 医療者への影響については,開催に従事する多職種間の相互理解や役割の再確認が進むことで,チーム医療での協働が円滑になるといった効果も認められた10, 11, 13)。 海外では進行癌に対してピアサポートプログラムが整備されているが14),ピアサポート介入に関する研究のほとんどは乳癌や前立腺癌などを対象としたもので,膵癌患者に対する有用性の検討は十分とは言えず,介護者に関する研究もほとんど無い。今回の検討でも,米国からは Pancreatic Cancer Action Network(PanCAN)で行っている,電話で情報提供する
元のページ ../index.html#15