CQ[推奨の強さ 弱い ,エビデンスの確実性(強さ):C(弱)]PC1膵癌患者と家族が,体験の共有や知識の提供を目的としたプログラムに参加することは推奨されるか ?膵癌患者と家族が,体験の共有や知識の提供を目的としたプログラム(患者会や膵がん教室等)に参加することを提案する。6 患者・市民の立場から(Patient & Citizen)〔PC〕ステートメント解 説 膵癌は極めて予後不良な疾患の一つで,短期間で治療方針を変更することがあり,患者とその家族(介護者)は,治療方法や症状を緩和する方法,療養場所などの選択に際して頻繁に判断を迫られることがある。また,予後不良なことから患者や介護者は精神心理的にも深刻な苦痛を伴う割合が高く(患者:33~50% 1),介護者:12.2~49.8% 2)),サポートの必要性が示されている。がん患者および介護者に対しては正確な情報を得ることが適切な選択や症状・不安感の低減に寄与するとされている3, 4)。 こうした背景から,現在わが国では,疾患や抗がん治療,副作用の対策,栄養,コミュニケーション,医療制度などさまざまなテーマの正確な情報を提供し体験を共有することで患者・介護者の療養生活を支援することを目的に,全国で膵がん教室が開催されている。 今回の改訂にあたり,患者市民グループとして初めて CQ を設定することとなった。グループ内では患者団体へのアンケートや患者が関わる臨床疑問を基に,診断・疫学,薬物治療,食事・栄養,終末期,情報提供・共有,患者・家族へのケア・支援や意思決定といった全人的苦痛に対する包括的緩和ケアなどに関する CQ 案が挙げられた。このうち,最重要課題の一つとして体験の共有や知識の提供を目的としたプログラム(患者会や膵がん教室など)開催の有用性を検証する目的で本課題を CQ として設定した。 本 CQ の検証に際しては,膵癌,QOL,医療者・患者関係をキーワードとして PubMed,MEDLINE,医中誌で検索した文献にハンドサーチを加え,最終的にケースコントロール研究の前向き観察研究 2 件を採用した。アウトカムとして①患者の QOL の改善,②疾患や治療に関する患者の知識の改善,③患者の自己効力感の改善,④患者の不安の軽減,⑤患者の体のつらさの軽減,⑥疾患や治療に関する家族の知識の改善,⑦家族の自己効力感の改善,⑧家族の不安の軽減,⑨参加後の患者の疲労感,⑩気持ちのつらさの増加,を設定していたが,今回検索した文献では患者・家族の知識の改善,患者の気持ちのつらさの 2 項目で検証が可能であった。膵癌患者および家族に対し膵がん教室・患者サロンへの参加と不参加を比較したメタアナリシスはなかった。また,いずれも膵癌・胆道癌を対象としており,膵癌のみで検証することはできなかった。310 6.患者・市民の立場から(Patient & Citizen)〔PC〕
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