る2)。特に,lactate,LysoPC(18:2),alanine,choline,threonine,asparagine,tyrosine, 論診断法各Ⅰ FRQD1FRQ-D1 129膵癌を疑った場合,バイオマーカーによる評価は推奨されるか?膵癌の診断能向上のためにバイオマーカーによる評価の有用性が示されつつあるが,さらなる検証が必要である。ステートメント解 説 膵癌は予後不良な疾患であり,早期診断による治療成績の向上が重要な課題であるものの,血清 CA19‒9 などの腫瘍マーカーは,早期膵癌では陽性率が低いことから新たな診断バイオマーカーの開発が求められている1)。2024 年 4 月よりアポリポ蛋白 A2(APOA2)アイソフォーム検査が,保険適用で臨床使用が可能となった。APOA2 アイソフォームは,膵癌の検出において CA19‒9 と同等以上の診断能を示すことが報告されており,ROC 解析による曲線下面積値は APOA2 アイソフォームで 0.879,CA19‒9 で 0.849 であった。特に StageⅠの膵癌に対する感度は APOA2 アイソフォームで 47.4%,CA19‒9 で 36.8%と,早期膵癌の検出においても CA19‒9 を上回る成績が示された2)。 リキッドバイオプシー診断としては Sakai らにより全血中の 56 遺伝子の mRNA 発現を測定する膵癌スクリーニングシステム(パンレグザ ®)が開発され,2022 年 6 月に薬事承認されている。膵癌患者 53 例における感度は 73.6%,非がん対照 102 例における特異度は 64.7%であり,Stage ⅠおよびⅡの早期膵癌における感度は 78.6%と良好な成績が示されており今後の有用性評価が待たれる3)。 薬事承認および保険適用となっていないバイオマーカーに関しては,近年,生体内の代謝産物を解析するメタボロミクス解析や血液や体液から腫瘍由来の成分を評価するリキッドバイオプシーによるバイオマーカー研究が急速に進展している。リキッドバイオプシーは,従来の組織生検と比較して低侵襲であり,繰り返し検査が可能という利点をもつ。主な解析対象として,循環腫瘍 DNA(circulating tumor DNA;ctDNA),循環腫瘍細胞(circulating tumor cell;CTC),エクソソームに含まれる microRNA(miRNA),およびメタボロームなどが注目されている4‒11)。 メタボローム解析による膵癌の診断バイオマーカー研究は,最近急速に進展してきた分野である。メタアナリシスの結果からは,アミノ酸,グリセロリン脂質,脂肪酸,低分子有機酸など 21 種類の代謝物が複数の研究グループにより膵癌で変動することが報告されていlysine などが膵癌患者で低下し,palmitate や 3‒hydroxybutyrate が上昇することが示されている。これら 10 種類の代謝物パネルによる解析では,正常対照群と膵癌患者群の判別において高い曲線下面積値(0.992)が得られている。しかしながら,大腸癌患者との比較では 8 つの代謝物が同様の変動を示すなど,疾患特異性の問題も指摘されており,より大規模な検証研究が必要とされている。
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