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は,皮膚にとって極めて重要である。性ホルモンが分泌され,小児の肌は瑞々しい思春期の肌に変化し,中高生では男性ホルモンによって尋常性ざ瘡が現れる場合がある。一方,ヒトは年齢とともに性ホルモンの働きが衰え,肌の老化や皮膚付属器(毛や爪)に変化が現れる。ホルモン療法が始まると患者の皮膚・付属器に生理的変化に類似した変化が現れ,薬疹など副作用を生じることがある。近年,前立腺がんの患者に対して投与されるアパルタミド(アーリーダ®)で薬疹が報告されるようになり,今回の改訂でも症例を呈示したいと考えた。しかし,残念ながら作業期間をとおして典型的な皮膚症状を撮影することができなかった。本書でアパルタミドによる皮膚症状を紹介できないことを読者の皆様にお詫びする。一方,乳がんのホルモン療法では,しばしばCDK4/6阻害薬を併用し,皮膚障害が現れる場合がある。本書ではアベマシクリブ(ベージニオ®)による皮膚障害を第1章に紹介したので参照してほしい。 前版を編集していた2017年頃,免疫療法の適応症は一部のがん種に限られていた。しかし,第2版に至ると免疫療法が普及し,各診療科・各がん種における標準治療の薬剤のひとつとして免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が多くの患者に投与されている。皮膚障害は,諸臓器の免疫関連有害事象(irAE)に比べると軽症にとどまることが多い。しかし,皮膚症状の発症頻度は高く,諸臓器のirAEに先行して現れる場合もある。irAEで皮膚障害を疑う場合には,内分泌異常など重篤な副作用に留意することが医療者には求められる。患者の安全を守るうえでも重要と考え,本章で症例を呈示した。ぜひirAEとして生じやすい乾癬様の皮疹,扁平苔癬,水疱性類天疱瘡などとあわせて参照してほしい。 がん治療が進歩し,がん薬物療法と放射線治療による相互作用や,複数の薬物が併用あるいは逐次的に投与され,相互作用により今まで経験したことのない皮膚障害が現れたり,皮膚症状が重症化したりすることがある。特に,ICIを併用あるいは先行して投与し,さらに皮膚障害が起こりやすい薬剤が患者に投与されると,皮膚症状が重症化する場合がある。そこで,本章では診断や治療に苦渋した症例を呈示する。やむを得ず原因薬剤を中止した症例や,合併症のため患者が死亡した事例を挙げているが,いかに安全にがん薬物療法を患者に提供できるか,今までJASCC学術集会で議論した症例を含めて呈示した。さらに近年,がん治療に際して感染症を予防するために各種ワクチンを接種することが推奨されている。このため,本章ではワクチンに伴う皮膚障害も呈示した。ぜひ参照してほしい。 本書では,新たに「放射線皮膚炎」「感染症」「血管・血栓症に関連した有害事象」「支持医療の副作用」の項目をたて,症例を呈示する。放射線皮膚炎は,皮膚障害対策の主要なテーマのひとつであり,頭頸部の症例を中心に本章で概説する。感染症は,がん治療における大きな課5 免疫チェックポイント阻害薬6 免疫チェックポイント阻害薬併用・逐次的薬物療法7 がん治療に伴う合併症xvi

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