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第2版について 支持医療のなかで,皮膚障害はエビデンスに欠ける領域のひとつである。このため,わたしは他領域の研究者や医療者から批判に晒されることがある。当該領域に対する批判を真摯に受け止め,本学会をとおして患者と社会に共感compassionが生まれることを思い描き,今回「がん治療に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント 第2版」に取り組んだ。写真は,もっとも確かな証拠evidenceである。この医学書を手にとられた読者の皆様には,一枚一枚の写真のなかに込められた支持医療のメッセージに触れてほしい。そして,ぜひ本書を現場で活用し,各医療施設の患者・家族のために役立てて戴ければ幸いである。 最初に,撮影に協力してくださった患者さん一人一人に深く感謝する。私ども医療者が支持療法を提供し,症状が緩和されwell—beingを回復した方がいる一方,残念ながら亡くなった方もいる。本書には支持療法の成功例だけではなく,後悔しながら経過を振り返り,支持医療の課題を取り上げた症例もある。ぜひ多くの視点で本書の内容を評価し,読者の皆様からコメントを戴きたい。 本書は,いくつかのテーマを掲げながら改訂作業を行った。近年,がん薬物療法の標準治療として用いられる医薬品は増加し,支持療法薬も増える傾向にある。そこで,現在使用されている医薬品と関連する事例をできる限り多く紹介しようと考えた。皮膚障害の要因になるがん薬物療法の薬剤および支持医療薬を,それぞれ一覧に示す(表1,2)。薬剤の増加とともに,第2版の内容は前版に比べて複雑になり,わかりにくい箇所があるかもしれない。そこで,まず読者に対して本書のテーマを伝え,各章で着目してほしいポイントを紹介する。 初版は「がん薬物療法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」だった。今回,本書を改訂し,タイトルを「がん治療に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント 第2版」へ変更した。がん診療は日々拡大し,がん薬物療法の進歩はめざましい。新規薬剤が標準治療として患者に提供される一方,すでに処方されなくなった薬剤もある。また,医療機器の発達とともに手術や放射線治療の精度も向上し,より新しい治療として患者に提供される機会が増えた。一方では症状緩和を図るため,がん治療では患者に鎮痛薬や制吐薬が投与されることがある。このため,がん薬物療法を踏まえつつ,多様な薬物相互作用に留意する必要がある。従来,皮膚障害を評価して対処するには,ある特定の薬剤から生じる皮膚障害を理解し,対処することが多かった。しかし,今日では治療や薬剤の組み合わせによって多様な皮膚症状が現れる可能性を考えながら対処する必要がある。そこで第2版では,従来のがん薬物療法による皮膚障害に立脚し,副作用の対象をがん治療全般へ広げ,タイトルを変更した。この結果,集学的治療や支持医療自体に生じる課題にも触れ,初版に比べて2倍に近い症例を呈示するに至った。はじめに1 タイトルの変更xi

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