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 iii第2版の序関 戸 好 孝特定非営利活動法人日本石綿・中皮腫学会 理事長愛知県がんセンター研究所 副所長 中皮腫瘍取扱い規約の初版は2018年11月30日に発刊され,それから6年が過ぎました。その間,中皮腫の治療法が大きく変わってきました。薬物療法では,免疫チェックポイント阻害薬の有効性が確認されファーストラインで使用されるようになりました。現在,ニボルマブは胸膜中皮腫のみならず,腹膜,心膜,精巣鞘膜中皮腫においても保険診療で使用が可能となっています。外科療法では胸膜肺全摘術(EPP)に比べ,胸膜切除/肺剝皮術(P/D)が多く施行されるようになってきました。こうしたこともあり,胸膜中皮腫患者の予後が確実に良くなってきたことが報告されています。診断については,補助的検査の併用により小さな生検標本や細胞診でも中皮腫の診断が可能になりました。さらに,病期分類については2024年にIASLCによりTNM第9版に向けた改訂が提案され,特にT因子の大幅な改訂が提案されました。2024年12月19日に胸膜中皮腫に関するAJCC‒TNM第9版が発行され,それによると2025年1月1日より新しいTNM分類を使用することが求められています。 このような背景から,中皮腫瘍取扱い規約の改訂の必要性が強く求められました。初版は3団体の共同によって編集されましたが,そのうちの2団体,石綿・中皮腫研究会と日本中皮腫研究機構が統合し,2019年2月22日に特定非営利活動法人日本石綿・中皮腫学会Japan Asbestos Mesothelioma Interest Group(JAMIG)が発足しました。第2版では,この新たに設立された日本石綿・中皮腫学会と日本肺癌学会が共同で編集を行い,3つの関連団体(日本臨床細胞学会,日本産科婦人科学会,中皮腫細胞診研究会)から後援をいただきました。 2022年6月14日に第2版の作成準備会を開催して本格的に作成に着手しました。その後の作成において,初版の総責任者であった廣島健三博士にも多大なご協力をいただきました。さらに,章間の委員による相互レビューを行い,表記などについても一貫性をもたせました。図表や全体のレイアウトも読者にとってより分かりやすいように工夫を重ねました。 重要な用語変更に関しては「上皮型,肉腫型,二相型」を改め「上皮様,肉腫様,二相性」で統一したことが挙げられます。これは,WHOの中皮腫の組織分類として「epithelioid,sarcomatoid,biphasic」がすでに用いられており,英語の用語を忠実に訳すことが望ましいと考えたからです。「上皮様,肉腫様,二相性」の用語が本邦において普及することを強く期待しています。 「中皮腫瘍取扱い規約 第2版」が初版同様に全国の病院に配備され,中皮腫の日常診療に活用されることを期待します。 2025年1月

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