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  1.びまん性中皮腫 Diffuse mesothelioma 9050/31)上皮様中皮腫 Epithelioid mesothelioma 9052/3定 義 胸膜,腹膜などの漿膜に沿って広がる,中皮への分化を示す悪性腫瘍。解 説 通常,漿膜に沿って,びまん性,あるいは多結節性に浸潤増殖することがほとんどであり,胸膜中皮腫は進行すると肺を鎧状に取り囲むような増殖パターンを示す。さらに,胸壁や肺実質,心囊,横隔膜へ直接浸潤する。リンパ節転移を認めることもある。しかし,早期に発見された場合,必ずしもびまん性の病変ではなく,小隆起病変として発見される場合もある。いったん消失した片側性の胸水が数カ月後に再度出現し,中皮腫と診断されることもある。特殊な場合として,気胸で発見される場合,胸膜ではなく肺内に病変が見つかる場合(肺内中皮腫),胸膜から肺実質に進展して置換性増殖lepidic growthを示す場合などがある。遠隔転移は初期には稀だが,進行するとみられる。鑑別疾患は,癌腫の胸膜転移と間葉系腫瘍であるが,胸水のみを指摘された場合は胸膜炎も鑑別に挙がる。定 義 上皮様の形態を示すびまん性中皮腫。解 説 上皮様中皮腫は類円形の上皮様細胞の増殖からなり,通常これらが接着した構造を示すが,個々単離して線維性結合組織内にみられる場合もある。細胞異型は目立たないことが多い。上皮様中皮腫は以下に記すように多彩な組織構築パターン,細胞学的特徴を示すが,多くの症例ではこれらの組織構築,細胞形態のうち複数が混在して存在する。線維性間質はほとんどないものから顕著なものまで様々で,細胞成分に乏しく硝子化が強い場合と,紡錘形細胞の密度が高い場合がある。間質の量が多く紡錘形細胞密度が高い症例では,二相性中皮腫との鑑別が問題となる場合がある(二相性中皮腫の項,p97参照)。また,間質に顕著な粘液様変化を伴う場合は予後良好と関連する。WHO分類第5版では,核異型度,核分裂像の数,壊死の有無に基づいて上皮様中皮腫に関してはグレード分類を行うことが提唱されている。 中皮細胞の増殖が悪性であることは,軟部組織(脂肪組織,骨格筋)や肺実質への浸潤を示すことが確実な根拠となるが,表層のみのサンプリングではこれが証明されず,診断に苦慮する場合がある。 鑑別すべき疾患として,癌腫の浸潤・転移(肺癌や他臓器からの転移),および反応性中皮過形成,悪性リンパ腫などが挙げられ,鑑別には免疫組織化学的染色やFISH法などが有用である。Ⅴ.胸膜腫瘍

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