割を入れる場合は,固定後の再構築に支障をきたさぬよう十分な配慮が必要である。遺伝性乳癌卵巣癌の既発症者に対して,対側のリスク低減乳房切除術が行われた場合の切り出し方法については,現時点で,積極的に勧めるべき方法はなく,各施設の判断に委ねられている。注:「遺伝性乳がん卵巣がん症候群の保険診療に関する手引き」(日本乳癌学会,00年)にはA(内上部),B(内下部),C(外上部),D(外下部)からサンプリングする方法と,標本すべてからブロックを作製する方法が紹介されている。 3 .組織の固定摘出された生検検体や手術材料は,速やかに十分量(検体容積の約10倍,大きい検体でも等容積以上)のホルマリン系固定液を用いて固定を行う。直ちに固定の行えない施設にあっても,摘出臓器は冷蔵庫(4℃)等に保管し,3時間程度以内に固定を行うことが望ましい。摘出後30分以上室温で保持することは極力回避する。固定液は10%中性緩衝ホルマリン液が,固定時間は6〜7時間が推奨される。(参考文献)1)日本病理学会編.ゲノム研究用・診療用病理組織検体取のい規程.羊土社,019. 4 .肉眼型分類割面の肉眼像あるいはHE標本のいわゆるルーペ像で分類する。1)非腫瘤型(Non-masstype)腫瘤形成の明らかでない病巣。小結節が集簇するものも含む(図4)。)圧排型(Expansivetype)腫瘤を形成し,周囲組織に対して圧排性に増殖している病巣。充実性増殖を示すもの(図5)や囊胞性のもの(図6)が含まれる。3)浸潤型(Infiltrativetype)腫瘤を形成し,周囲組織に対して浸潤性に増殖している病巣。辺縁が鋸歯状のものと,周囲組織を巻き込みスピキュラを形成するものが含まれる(図7)。4)混在型/分類不能型(Mixedtype/Unclassifiedtype)同一癌巣に上記1))3)が混在する病巣,あるいは分類不能な病巣。注1:肉眼およびルーペ像で病変が不明瞭なものは分類しない。注:混在型は存在する型を記とすることが望ましい〔例:混在型(非腫瘤型+圧排型)〕 5 .病理学的病期分類a.原発巣の大きさの測定法・記載法原発巣の大きさとして最大間質浸潤径を記とする。乳管内癌巣を含めた腫瘍全体の径も記とすることが望ましい。742部2病理編
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