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6.乳頭部腺腫 Nipple adenoma(図11,12)乳頭内または乳輪直下乳管内に生ずる乳頭状ないしは充実性の腺腫であり,乳管内乳頭腫と同じく上皮細胞の配列は2細胞性である。注: 同義語としてadenoma of the nipple,乳輪下乳管乳頭腫症(subareolar duct papillomato-sis)がある。7.その他 Others唾液腺型腫瘍(多形腺腫pleomorphic adenomaなど),皮膚付属器型腫瘍(アポクリン腺腫apocrine adenoma,汗管腫様腫瘍syringomatous tumor)などがまれに認められる。B.前駆病変 Precursor lesions癌の基準は満たさないが上皮に細胞異型と構造異型を伴う病変として,円柱状細胞病変(columnar cell lesions)[平坦型上皮異型(flat epithelial atypia;FEA)を含む],異型乳管過形成(atypical ductal hyperplasia;ADH),異型小葉過形成(atypical lobular hyperplasia;ALH)がある。低異型度乳癌のリスク病変や前駆病変としての意義が議論の対象となっている病変である。ALHは次項C.1.に解説がある。1. 円柱状細胞病変 Columnar cell lesions[平坦型上皮異型(Flat epithelial atypia)を含む](図13,14)円柱状細胞病変は,TDLUにおいてさまざまの程度に拡張を示す腺房があり,概ね均一な円柱状上皮に被覆された病変をいう。円柱状細胞病変の中で,構成上皮が低異型度の非浸潤性乳管癌に類似した細胞異型を有する病変が平坦型上皮異型である。核は1〜数層まで重積し,しばしば管腔面にapical snoutsを伴う。重積した上皮が房状となることはあるが,橋渡し状構築や微小乳頭状構築を形成することはない。内腔に分泌物や石灰化を伴うことがある。通常は顕微鏡サイズの病変である。2.異型乳管過形成 Atypical ductal hyperplasia(図15,16)TDLU内を主体に一部そこから連続する乳管内で,質的には低異型度の非浸潤性乳管癌に類似した異型上皮が橋渡し状や微小乳頭状,篩状や充実性に増殖するが,量的に2つの管腔あるいは2 mm未満にとどまる病変をいう。原則的に微小な病変で,乳管内乳頭腫,放射状硬化性病変などの良性病変に付随して生じることがある。診断困難な乳管内増殖性病変に対してこの用語を用いるべきではない。28 第2部 病理編

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