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Ⅰ ．上皮性腫瘍　Epithelial tumorsA．良性腫瘍　Benign tumors1．乳管内乳頭腫　Intraductal papilloma（図1〜4）乳管内に発生する乳頭状腫瘍で，臨床的に乳頭からの出血をみることが多い。乳輪近傍に集まる太い乳管に孤立性に発生する中枢性乳頭腫と，末梢乳管や終末乳管小葉単位（terminal duct lobular unit；TDLU）に多発する傾向のある末梢性乳頭腫に分類される。組織学的には，円柱ないしは立方状の乳管上皮と筋上皮が2細胞性（2相性）をなして乳頭状ないし樹枝状に配列し，間質に富む。乳管が囊胞状に拡張したものは囊胞内乳頭腫（intracystic papilloma）とも呼ばれる。本腫瘍内に異型上皮や非浸潤癌を合併することがある。2．乳管腺腫　Ductal adenoma（図5，6）良性の上皮細胞の増殖からなる乳管内病変であり，大小さまざまな腺管が密に増殖し，乳管上皮が充実性増殖を示すこともある。しばしば病変の中心部に瘢痕状の線維化がみられ，辺縁部は被膜様構造で被覆されることが多い。ときに病巣が乳管外へ偽浸潤様に広がることや異型の強いアポクリン化生がみられることがある。注：同義語として硬化性乳管内乳頭腫（sclerosing intraductal papilloma）がある。3．管状腺腫　Tubular adenoma（図7）上皮成分の増殖を主体とし，比較的間質に乏しいもので，周囲組織との境界は明瞭である。上皮成分は小管状構造を呈するものをいう。4．授乳性腺腫　Lactating adenoma（図8）上皮成分の増殖を主体とし，周囲組織との境界は明瞭である。妊娠授乳期に生じ，分泌性変化を示す管状腺房構造を有するものをいう。5．腺筋上皮腫　Adenomyoepithelioma（図9，10）乳管上皮細胞と筋上皮細胞の2種類の上皮細胞より構成されるが，筋上皮細胞の増生が主体である。基本的には良性腫瘍で，境界明瞭で多結節性の腫瘤を形成し，周囲は線維性結合織で取り囲まれる。まれに，乳管上皮または筋上皮の一方または両方が癌化することがあり，悪性成分を伴う腺筋上皮腫（adenomyoepithelioma with carcinoma）あるいは悪性腺筋上皮腫（malignant adenomyoepithelioma）として，悪性腫瘍に分類される。第1章　乳腺腫瘍の組織学的分類　27