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肺癌 Ⅰ.肺癌の診断 節の場合には,確定診断を行う前に質的画像診断として造影CTやMRI,FDG—PET/CTを行う場合がある。造影CTやFDG—PET/CTは日本でもよく行われているが,MRI検査は欧米では結節の良悪性の鑑別診断に有効との報告があるものの日本ではこの目的で行っている施設は限られている。これらの検査で肺癌を疑う所見が認められた場合には,確定診断に進む。一方,これらの検査を行っても良性結節と診断できないか,肺癌が否定しきれない充実型結節やすりガラス影を伴う結節では,高分解能CTでの結節の大きさや性状,患者背景の危険因子の有無に応じて,一定間隔の経過観察を行う。総 論  73) 確定診断 胸部CT,造影CT,MRI,PET/CTなどの画像診断は良悪性の鑑別に有用であるが,肺癌の確定診断には病変部から採取した組織もしくは細胞による病理診断が必要である。肺癌は組織型,ドライバー遺伝子の有無,PD—L1の発現状況などにより治療方針が異なるため,一部の手術例を除き,治療開始前に確定診断を行う。確定診断のための方法には,気管支鏡検査・生検,経皮針生検,胸腔鏡検査・胸膜生検,外科的肺生検などがあるが,簡便で低侵襲な検査から実施することが原則である。さらに各検査の診断率・感度・特異度や合併症率だけではなく,各施設での普及度や術者の習熟度などの状況も加味したうえで,それぞれの検査の必要性や優先度を検討し,確定診断方法を選択することが必要である。4) 病期診断 肺癌はTNM分類による病期診断により予後予測が可能で,病期分類に従い治療方針を決するため,肺癌と診断した場合に病期診断は必須である。 従来は胸腹部造影CTに加え,骨シンチグラフィ,頭部MRIなどの検査を行い,病期診断を行うことが通常であったが,FDG—PET/CTの急速な普及により,病期診断,特にリンパ節転移(N因子),遠隔転移(M因子)はより正確な診断が可能となっている。しかし,FDG集積の偽陽性,偽陰性も一定数認めるため,結果の解釈には注意が必要で,特に抗酸菌感染症の多い本邦では,肺野の結節や縦隔リンパ節を含め,FDG集積を認めても偽陽性を念頭に慎重に判断することが求められる。近年はEBUS—TBNAやEUS—FNAなど,縦隔リンパ節に対して比較的低侵襲な組織学的検査のエビデンスも蓄積されており,画像診断でリンパ節転移や遠隔転移を疑った症例には,組織学的な診断を追加することも検討すべきである。 一方,いずれの検査も簡便で低侵襲な検査から実施することが原則であり,各施設での検査の普及度や習熟度などの状況も加味して,各検査の必要性や優先度を検討することが必要である。5) 分子診断 ドライバー遺伝子異常を有する非小細胞肺癌患者に対して,各ドライバー遺伝子に対する標的療法は,ORRやPFSにおいて有効性が示されている。10種類のドライバー遺伝子について解析した前向き研究では,733人中466人(64%)にいずれかのドライバー遺伝子異常を認め,そのうち,各々の分子標的治療を受けた群で有意にOSが延長していた9)。以上より,ドライバー遺伝子変異/転座陽性例に対しては,それらに対する標的療法の投与機会を逸しないことが重要である。 免疫チェックポイント阻害薬は,腫瘍免疫における調節因子であるPD—1などの免疫チェックポイ

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