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6  肺 癌解 説1) 危険因子と臨床症状,検出方法について 肺癌は日本人における癌死の第1位であり,発生率は50歳以上で急激に増加する。喫煙は危険因子の1つであり,非喫煙者に比べて,喫煙者が肺癌になるリスクは男性で4.4倍,女性で2.8倍と高い1)。喫煙開始年齢が若いほど,喫煙量が多いほど,肺癌リスクは高くなる2)。喫煙の他に慢性閉塞性肺疾患,間質性肺炎,アスベスト症などの吸入性肺疾患,肺癌の既往歴や家族歴,年齢,肺結核なども肺癌リスクを高めると報告されている3)。肺癌に特徴的な臨床症状はないが,咳嗽,喀痰,血痰,発熱,呼吸困難,胸痛といった呼吸器症状がみられることもある。このような危険因子例・有症状例に対しては,肺癌検出のための検査を行う。なお,本項の「検出」は有症状または二次検診の症状を対象としており,検診とは異なる。 最初に行うべき検査は胸部X線で,胸部X線で異常がある場合は,胸部CTを行う。胸部CTは,肺癌を検出する形態診断法として,現時点で最も有力な検査である。肺癌の検出には,胸部X線,胸部CT以外にも,喀痰細胞診や腫瘍マーカー,FDG—PETなどを組み合わせて検出する場合もある。なお,本項で推奨されている検査の中には,施設によっては一部施行不可能なものも存在するが,その場合には近隣施設と連携して行うことが勧められる。総 論肺癌の診断(病理・細胞診断の総論は後述)2) 質的画像診断 検診などのスクリーニング検査や臨床症状によって撮影された胸部X線で肺癌を疑う所見を得た場合,CTでその存在の確認と病変の性状を評価しなければならない。 CTにて3 cmを超える肺病変で肺癌を疑う場合には,良悪性の鑑別診断のため必ず確定診断を行う。3 cm以下の結節では確定診断が不要な良性病変である可能性もあり,良悪性の鑑別を行うために質的画像診断が施行される。質的画像診断として,まず,肺結節部の高分解能CT(薄層CT)を行う。高分解能CTは,病変部を拡大し,高周波強調で再構成した2 mm以下の薄いスライス厚のCT画像である。多列検出器型CT装置が普及した現在では,通常,撮影した画像から再度撮影することなく,当該生データを用いて容易に高分解能CTが再構成できる。高分解能CTでは病理像に対応した特徴的な画像所見がみられ,肺結節の良悪性鑑別に有用な情報を得ることが可能であり,結節の周囲の既存構造も明瞭に描出されることから,結節周囲の血管,小葉間隔壁,胸膜などとの関係も観察することができる4)~7)。充実型結節において,均一あるいは中心部の粗大石灰化,層状の石灰化を伴う場合や,確実な脂肪濃度を認めた場合には,炎症後の肉芽腫や過誤腫などの良性結節と診断できる8)。一方,結節にスピキュラやノッチ,胸膜陥入,辺縁部の境界明瞭なすりガラス部分が認められた場合,あるいは不整な壁を有する空洞性結節の場合には,肺癌を疑って確定診断を行う8)。また,胸膜下の境界明瞭な小さな充実型結節が,perifissural noduleと称される一連の性状を呈していれば,肺内リンパ節などの良性結節と診断可能である7)。 高分解能CTで良性結節と診断できる確実な所見がなく,積極的に肺癌を疑う所見も認められない充実型結節や,肺気腫・肺線維症・担癌患者など肺悪性腫瘍の高危険群に生じた非特異的な充実型結

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