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胸腺腫瘍総 論 総 論  4195) 診断・進行度 画像診断としては,胸部単純X線写真,CT,MRI,FDG—PETなどが用いられる。縦隔内に腫瘍性病変が認められる場合,胸腺上皮性腫瘍が最も頻度が高いが,その他の悪性腫瘍として,悪性リンパ腫や悪性胚細胞性腫瘍などの可能性がある。患者の年齢や血清βhCG(human chorionic gonadotro-pin),AFP(alfa—fetoprotein),sIL—2R(soluble IL—2 receptor)およびLDH(lactate dehydrogenese)の測定値などによっても鑑別がある程度可能な場合がある。胸腺腫や胸腺癌は胸郭内にとどまることが多いが,胸膜播種は稀ならずみられる病態である。胸腺癌では,他臓器などへの転移や直接浸潤も比較的多くみられる。組織学的生検に関しては,切除困難な胸腺上皮性腫瘍を強く疑う場合には経皮的針生検を考慮するが,行う場合には可能なかぎり縦隔経路で施行すべきである。完全切除可能な胸腺上皮性腫瘍を疑う場合には,術前生検は回避すべきである。6) 進行度 胸腺上皮性腫瘍の進行度および病期分類には,正岡分類(表1),正岡—古賀分類(表2),および2017年に発行されたUICCによるTNM分類(表3)がある。臨床的にはこれまで正岡分類,正岡—古賀分類が汎用されてきていたため,多くの報告がこれらに基づいて記載されており,本ガイドラインでは原則として正岡分類で記述した。7) 病理組織(表4) 胸腺腫の組織亜型としては,卵円形および紡錘形腫瘍細胞からなるA型胸腺腫と類円形および多角腫瘍細胞からなるB型胸腺腫,それらが混在するAB型胸腺腫に分類され,B型胸腺腫はさらにその腫瘍細胞の形態と随伴する未熟Tリンパ球の多寡により,B1,B2,B3型に亜分類される。組織診断はこのWHO分類1)を用いて行う。鑑別診断には免疫染色も有用である。8) 治 療(1)外科治療 完全切除が可能な場合には,胸腺上皮性腫瘍の治療法として最も多く行われるのが外科切除である。腫瘍と胸腺,および周囲浸潤組織を完全切除する。通常,胸骨正中切開で施行されるが,近年胸腔鏡補助下手術,ロボット支援下手術も行われている。胸腺腫では,病理病期Ⅰ—Ⅱ期では追加療法の必要はない。胸腺癌では,Ⅰ期完全切除例では追加療法の必要はなく,Ⅱ期以上では術後放射線療法を行うことが推奨される。不完全切除例では,術後に放射線療法または化学放射線療法を行うことが勧められる。(2)放射線治療 根治照射可能で切除不能胸腺上皮性腫瘍に対しては,放射線療法または化学放射線療法が第一選択となる。放射線療法は,少なくとも3次元放射線治療で,線量分割は1回1.8~2 Gyの通常分割法で,少なくとも50 Gy,可能であれば54~60 Gy程度の照射を行うよう勧められる。術後放射線療法はR0例では40~50 Gy,R1例では50~54 Gy程度,R2症例では60 Gy以上の照射が勧められる。(3)薬物療法 切除不能のⅣ期または再発に対して,胸腺腫ではCDDPおよびアンスラサイクリン系抗癌薬の併用

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