94 1.診断法(Diagnosis)症(アーカイブ組織が存在しない場合)をアウトカムと設定した。費用対効果については国内での報告はなく,医療の背景(保険制度や遺伝性腫瘍の頻度/種類,医療費など)が異なる海外からの報告は日本に直接外挿できないことから評価対象外とした。 システマティックレビューで治療選択肢の増加に関連した前向き観察研究4編1‒4),患者集積,後ろ向き観察研究10編5‒14)を採用した。膵癌においてがん遺伝子パネル検査による「治療選択肢の増加」を直接的に評価した報告は極めて限られている。日本から10%(2/20)14),海外から1%(3/225)7)が対応した治療に結びついたという報告がある。また,海外からは多数例の報告が2編あるが,一つは米国のThe Pancreatic Cancer Action Network(PanCAN)とPerthera社が行ったレジストリー事業であるKnow Your Tumorprogram(KYT)で,1,082例にがんゲノムプロファイル検査を実施し,26%に治療ターゲットとなり得る遺伝子異常(actionable genetic alteration)が検出されたというものであり4),もう一つは3,594例にがんゲノムプロファイル検査を実施し,actionable genetic alterationが17%にみられたというもので8),潜在的な「治療選択肢の増加」と考えられるが,これらはactionable genetic alterationの定義により大きく変わり得る点に留意が必要である。固形癌全体で評価した報告でみても治療に結びついた事例の割合は3.7~23.4%であった。がん遺伝子パネル検査実施が予後を延長したことを直接証明するランダム化比較試験(RCT)の報告はない。KYTでは,分子マーカーにマッチした治療を受けたグループは,マッチしない治療を受けたグループや,マーカーが検出されなかったグループに対して予後が有意に良好であった4)。二次的所見についてはがんゲノムプロファイル検査実施における割合は2.3%との報告がある10)。二次的所見が指摘された場合は遺伝相談外来なども有効に活用しながら患者や家族に適切な情報提供,指導,支援ができるよう配慮が必要である(D7/D8参照)。追加生検による偶発症については,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS‒FNA)に関するシステマティックレビューで合併症の頻度は0.98%,腹膜播種のリスクは2.2%(1/46)と報告されている15)。各アウトカムについては報告も少なく後ろ向き観察研究が主体であり,エビデンスレベルは弱い。 本ガイドラインは患者市民グループと作成の初期段階から意見交換を重ねており,そこでリクエストのあった遺伝子検査に関わる費用や検査の実際,検査実施が可能な施設についても紹介する。本検査の保険適用に関しては,「標準治療がない固形がん患者又は局所進行若しくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる者を含む。)であって,関連学会の化学療法に関するガイドライン等に基づき,全身状態及び臓器機能等から,本検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した者に対して実施する場合に限り」,「患者1人につき1回に限り算定できる。」とされている。がんゲノム医療中核拠点病院,がんゲノム医療拠点病院,がんゲノム医療連携病院16)として指定を受けている保険医療機関での実施が指定されている。また,当該医療機関は,がんゲノムプロファイルの解析により得られた遺伝子のシークエンスデータ,解析データおよび臨床情報などを,患者の同意に基づき,医療機関または検査会社などからがんゲノム情報管理センター(C‒CAT)に提出する必要がある。検体提出時44,000点,エキスパートパネルに基づく結果説明
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