COLUMN各 論課題 ③一般臨床家における膵癌に関するゲノム医療への理解不足 地域医療圏における一般臨床家に臨床試験に関する情報を患者が希望しても,理解不足から積極的な高次施設への紹介がなされていない。一般臨床家が最新のゲノム医療の理解を深めるには以下の対策が有効と考えられる。対策 「ゲノム医療/臨床試験に関するサイトの紹介」課題 ④high‒volume centerにおける膵癌に関するゲノム医療の説明 high‒volume centerにおける膵癌に関するゲノム医療については,肯定的に捉える意見と否定的に捉える意見が混在していることが推測される。米国のNCCNガイドライン2021では,膵癌診断時に「がん遺伝子パネル検査」が推奨されているが,国内ではいまだ普及しているとはいえず,承認された薬剤にアクセスできない問題(アクセスラグ)が発生している。米国では,がん遺伝子変異にマッチした治療を受ければ,標準治療と比較して予後が改善する可能性が報告されており,今後の展開に期待が寄せられている3)。一方,現在国内では,「がん遺伝子パネル検査」は,標準治療の効果に限界がみられる際に行うと保険請求が可能な状況である。進行した膵癌患者は,標準治療が終了してパネル検査を受けた場合,すでに体力を消耗し,有効なゲノム医療を受けられない問題も発生している。米国のNCCNガイドライン2021では,転移を有する膵癌の場合,診断時に「がん遺伝子パネル検査」を行うことが推奨されており,今後,国内でもゲノム医療に関する説明を行うタイミングについて議論が必要であろう。対策 「ゲノム医療に基づく膵癌の成績を理解する」3今後に残された課題 以上臨床試験に関して想定される課題と対策を述べたが,これ以外にも医療現場には多くの課題が残されている。・多くの医療者が,以上に取り上げた課題自体を理解できていない。・「がん遺伝子パネル検査」の結果を開示された患者側の心理的サポート体制の構築。・複雑な臨床試験の仕組みを理解するツールの構築。・「がん遺伝子パネル検査」を受けられる機関の周知。などが挙げられる。今後これらの課題解決に向けた関係機関の取り組みに期待したい。COLUMN 8 355に重要である。自施設での対応が困難な場合は,上記施設への紹介を考慮する。B.がんゲノム医療推進に向けた取り組みについて(厚生労働省ホームページ)*https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00614.html 2021年3月に厚生労働省から発出された。現在のゲノム医療に関する方針が明示されており,基本的な方針を理解しておく必要がある。A.遺伝性腫瘍について*https://www.e-precisionmedicine.com/ja/(Precision Medicine Japan:会員登録が必要。最新のがんゲノム医療を学習できる)B.最新のセミナーを参照する*https://www.jsmo.or.jp/(日本臨床腫瘍学会のサイト:理解しやすい市民向けセミナーが随時更新されている)A.膵癌における遺伝子変異について 膵癌で薬剤のある遺伝子変異陽性が検出される患者は26.2%である。B.膵癌のゲノム医療に基づく治療と標準治療の全生存期間の比較 前者は後者と比較して全生存期間の延長が示唆される3)。
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