254 3.局所進行切除不能(Locally Advanced)膵癌の治療法〔L〕ステートメント高齢者の進行膵癌に対しての一次化学療法は,performance statusや併存疾患を考慮して1)ゲムシタビン塩酸塩+ナブパクリタキセル併用療法を行うことを提案する。2)ゲムシタビン塩酸塩単独療法を行うことを提案する。3)S‒1単独療法を行うことを提案する。解 説 近年,遠隔転移を有する膵癌の全身化学療法として,FOLFIRINOX療法〔オキサリプラチン,イリノテカン塩酸塩,フルオロウラシル,(レボ)ホリナートカルシウム併用療法〕,ゲムシタビン塩酸塩+ナブパクリタキセル併用療法が標準治療と位置づけられている1)。しかしながら,フランスで行われたFOLFIRINOX療法の第Ⅲ相試験では76歳以上の患者は除外基準に設定されていた。一方で,ゲムシタビン塩酸塩+ナブパクリタキセル併用療法の第Ⅲ相試験では,75歳以上の患者が10%登録されていたが,有効性,安全性に関するデータは限定的である2)。膵癌新規罹患患者の年齢割合をみると,約50%の患者が75歳以上であり3),高齢者において,どのような化学療法を行うかは重要な課題と考えられCQを設定した。 また,高齢者では,全身状態の低下により,副作用が増強する可能性,末梢神経障害により歩行などのactivities of dairy living(ADL)低下の可能性があり,高齢者独自の視点も評価に必要と考えられ,評価項目として全生存期間の延長に加え,疲労,末梢神経障害を重視した。 高齢者の定義として,膵癌における明確な基準はなく,FOLFIRINOX療法を行う頻度が著しく低下する76歳以上を基準とした。しかし,海外での高齢者のデータは70歳以上を対象としていることも多く,本CQでは,70歳以上を高齢者とした論文も採用した。 高齢者での研究は限られていること,患者の全身状態がさまざまであり,RCTが難しいことから,比較試験,ケースコントロール研究は限定的で,ほとんどが観察研究であり,高いエビデンスレベルを示す研究は認めなかった。以下各レジメンにおけるエビデンスを記載する。 FOLFIRINOX療法は,70歳以上を対象とした研究で,grade 3以上の疲労を55%に認めた報告があり4),76歳以上の高齢者を基準とした場合には推奨できないレジメンである5, 6)。 ゲムシタビン塩酸塩+ナブパクリタキセル併用療法は,75歳以上を対象とした複数のケー[推奨の強さ:弱い,エビデンスの確実性(強さ):C(弱)][推奨の強さ:弱い,エビデンスの確実性(強さ):C(弱)][推奨の強さ:弱い,エビデンスの確実性(強さ):C(弱)]CQLC3(MC3)高齢者の進行膵癌に対して一次化学療法は何が推奨されるか?
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