212第3章 治 療局所領域再発転移巣切除,放射線治療等サブタイプに応じて全身治療ホルモン受容体陽性,HER2陰性急激な病勢進行なし急激な病勢進行内分泌治療+/-分子標的治療(CDK4/6阻害薬,mTOR阻害薬)gBRCA1/2病的バリアントを有する場合,PARP阻害薬SDMにより治療方針を検討する。ACP・緩和医療/ケアを適宜導入する遠隔転移ホルモン受容体陰性,HER2陰性PD-L1陽性免疫チェックポイント阻害薬+化学療法化学療法HER2陽性抗HER2治療が主軸図1.転移・再発乳癌治療の進め方の枠組みとは異なり,がんや患者の特性を遺伝子解析結果によって個別に評価して治療に結び付けていく精密医療(precision medicine)の試みである。 また薬物療法のみならず,集学的治療として切除可能/出血や皮膚浸潤・神経浸潤を伴う局所領域転移,麻痺や脳圧亢進などの症状を伴う脳転移,著しい疼痛・骨折や脊髄神経障害を伴う骨転移などに対しては,手術や放射線治療などの局所治療も侵襲のバランスに応じて検討される。c.患者の価値観・希望や社会的背景を 転移や再発乳癌は治癒が困難であり,その診断は患者にとって非常に「Bad news/悪い知らせ」となる。そのなかで患者が人生で大切にしていること,どのように生きていきたいかなど患者の価値観を知ることは重要であり,医療者にはそれらを尊重し,サポートする姿勢が求められる。また,「悪い知らせ」により不安・抑うつ症状やさまざまな身体的症状を生じることもあるため,心理状態の評価と必要に応じ,カウンセリングや精神科と連携し心理的支援を行う。さらに,患者のセルフケア能力を高めるような支援のための多職種アプローチも有用である。 患者ごとに期待できる人的・社会的支援は異なる。個々の生活環境,活動度,経済的状況,ライフスタイルや就労,家事,育児,介護など社会的役割等の理解に努める。さらに,社会資源,経済的支援の可能性,家族の社会環境,キーパーソンの身体精神的状況などに配慮することも重要となる。d.治療の選択とSharedDecision 治療方針の選択,今後のケアの方針の相談などの場において,前述の① 身体的因子,② 腫瘍側因子,および③ 患者の意向や社会的背景を考慮しつつ,医療者は患者およびケアギバーとともに今後の医療やケアの目的・ゴールの設定をその都度行う。適応となる医療やケアが複数ある場合,あるいは臨床試験・治験等が選択肢となることもあるため,多職種が連携しつつ方針を模索することが有用となる。医療者と患者は,それまでの経過や治療に関する情報を共有し,患者およびケアギバーの意向や価値観を尊重し,今後の方針についてSDMを行う。推奨され得る治療やケアの選択肢,具体的な治療内容,コスト,通院スケジューSDM:shared decision makingACP:advance care planning把握するMaking(SDM)
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