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 2022年5月 日本乳癌学会 第5代理事長 井 本   滋xxii 2018年6月,理事長に信任されたが,困難な事象を乗り越えたことも多々あり,ご支援いただいた会員に深く感謝いたします。乳癌診療は,画像,病理,遺伝子プロファイルに基づく診断から,患者と家族の意向を尊重し,エビデンスに基づいた治療の実践が大切である。そこで,私はミッションとして「国民が安心できる乳がん診療を提供すること」を,ビジョンとして「次の10年に向けて学会の活性化を図ること」を掲げた。 2019年5月,日本人女性初のBIA‒ALCL発症の報告に端を発した人工乳房のリコールがあり,一時的に供給が中止され,乳房再建ができない状況となったが,日本オンコプラスティックサージャリー学会(JOPBS),厚生労働省ならびに関係機関の尽力で代替品が早期に保険承認された。2022年1月時点で4例のBIA‒ALCLが報告されたことから,再建乳房のスクリーニングには注意が必要である。 2019年12月,中国湖北省の武漢で新型コロナウィルスによるパンデミックが始まった。乳癌診療についてCOVID‒19に伴うトリアージをHPに掲載した。ワクチン接種を受けても変異株による感染もあることから,2020年以降は対面からウェブでの会議が主流となった。学術総会も第28回は完全ウェブ形式,第29回は現地+オンデマンド形式で開催され,第30回はライブ配信も取り入れたハイブリッド形式となった。 学会活動として,班研究とNCD登録を利活用した研究が進められ,乳癌診療ガイドラインの改訂,乳腺腫瘍学の改訂も行われた。特筆すべきは学会誌「Breast Cancer」のImpact Factorが4を超えて乳癌領域の一流誌の仲間入りを果した。国際活動として,第27回学術総会からGBCC/KBCS(Global Breast Cancer Conference/Korean Breast Cancer Society)との合同セッションが始まり,若手医師の相互交流にも取り組んだ。また,SIS(Senologic International Society)のactive memberに加わり,BCN(Breast Cancer Network)へ施設単位での参加が可能となった。 2020年4月,BRCA病的バリアントを有する既発症者を対象に,リスク低減乳房切除術と乳房再建術,リスク低減卵管卵巣摘出術が保険診療となった。そこで,学会ホームページにHBOC診療に関する啓発文と啓発ビデオを公開した。 日本専門医機構による新たなサブスペシャルティの育成が2022年4月から開始された。従来の学会が認定する乳腺専門医に加えて,学会と機構が認定する乳腺外科専門医の育成が始まった。最後に,本学会は2022年創立30周年を迎えたため,記念式典,記念誌,記念展示などの事業を企画した。日本乳癌学会の歩み(5)

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