表1.CADの種類CADe(Computer aided detection):病変(異常)を検出するものCADx(Computer aided diagnosis):病変(異常)の質的な評価(良悪性など)を行うものNon―CADe:臓器の判別など,病変検出を行わないものAI(人工知能)機械学習ニューラルネットワークディープラーニングCNN図1.AIの分類3.画像診断/COLUMN1453) これからのAIの課題 一定の診断能が示されたAIを用いることで,効率の良い検診・診断が行えるようになることが期待されるが,現時点では診断の責任は医師にあり,AIは病変の検出の補助や診断の補助といった位置付けである。また,AIを使って診断を受ける受診者の意向も重要である5)。AIを導入することで時間の節約,術者や読影者の疲労軽減,経験やスキルの不足を補うことができると考えられる。これからはAIを使うかどうかでなく,どのようにAIを実装していくかが課題となる。参考文献 1) 藤田広志.乳癌の臨.2021;36(1):7‒17. 2) McKinney SM, et al. Nature. 2020; 577(7788): 89‒94. 3) Fujioka T, et al. Diagnostics (Basel). 2020; 10(12): 1055. 4) 椎名毅ほか.乳癌の臨.2021; 36(1): 39‒46. 5) Ongena YP, et al. J Am Coll Radiol. 2021; 18(1 Pt A): 79‒86.(久保田一徳)COLUMN 医療分野でのAI(人工知能)開発が急速に進んでおり,特にディープラーニング(deep learning:深層学習)の手法を用いることで画像診断においても高い精度での診断支援ができるようになってきた1)。乳腺診療を中心とした画像診断におけるAI利用の現状と今後について検討する。1) 現在のAI技術の中心となるディープラーニングとは 機械学習の中で,教師あり学習と呼ばれる手法では,多数の画像とその答え(例:良悪性)を教師データとして用意すると,コンピュータが勝手に学習して特徴量をみつけ,新たな画像を入力すればその答えを示すようになる。ディープラーニングは機械学習の一つで,多層化させたニューラルネットワーク(人間の脳神経の構造を模倣した作り)を用いたものであり,画像認識においてはCNN(convolutional neural network)という手法が多く用いられる(図1)。高画質の画像を教師画像とすることにより,低線量や低画質の画像の改善を行うことも可能であり,既にCTやMRIでは実用化が進んでいる。 ディープラーニングでは学習データの量や質によって精度が変化する。また,過学習によって別のデータに対しては低性能になるというような問題もある。AIは診断根拠がわからないブラックボックスとも考えられるが,判定の根拠を示すAIも登場してきている。現時点のAI製品は,市販後学習は行わないため,独自に成長することはない。2) 病変検出を行うCADeと診断を行うCADx マンモグラフィにおいては,アルゴリズムベースで病変検出を補助するCADe(computer aided detec-tion)製品が従来から存在する。腫瘤や石灰化を検出してくれることで見逃しを防ぐ効果は期待できるものの,偽陽性が多いことが知られ,日本での普及が進まない理由の一つと思われる。 近年はディープラーニングを用いたマンモグラフィのAI開発が大規模に行われ,良悪性判別など病変の質的評価も行うCADx (computer aided diagnosis)製品が登場し,読影医師と同等程度の診断能も報告されている2)(表1)。診断だけでなく,乳房の構成の判定やポジショニングの評価にもAIを使ったものがある。乳房超音波においてもAIの研究が進み3)4),病変検出や質的診断を行うAIが海外では製品化されている。画像診断におけるAIの利用
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