治療編総説¾細胞増殖マーカーの一つ。浸潤癌成分における陽性率をラベリングインデックスとして表す。¾標準化された染色法や判定法は確立されていない。¾Ki67と予後との関連については複数のメタアナリシスで検証されており,Ki67高値は乳癌¾Ki67の化学療法効果予測因子としての意義は乏しい。¾治療効果・予後予測ツールとして,Predict(https://breast.predict.nhs.uk/)がある。腫瘍浸潤径,腋窩リンパ節転移の有無と転移個数,グレード,年齢,閉経状況,ER状況,HER2状況,Ki67を入力することで,手術のみ施行したときの生存率(ベースラインリスク)と薬物療法の上乗せ効果を算出できる。なお,Predictの結果を利用する際には,Predictで算出されるのは,無病生存率(disease—free survival;DFS)ではなく,全生存率(overall survival;OS)であること,英国のがん登録データベースを用いてつくられたツールであることに注意が必要である。¾乳房全切除術の適応4.治療方針a.外科療法【豆知識】ベースラインリスク(baseline risk)とは周術期の薬物療法を検討する場合,まず最初に,手術のみを行った場合にどの程度の再発が予測されるかを推定する。これを「ベースラインリスク(baseline risk)」と呼ぶ。次に,適応となる薬物療法を追加した場合の「相対的な再発リスク抑制効果(relative risk reduction)」を推測し,ベースラインリスクと相対的な再発リスク抑制効果から,「絶対的(実質的)な再発リスク抑制効果(absolute risk reduction)」を算出する。例えば,患者Aのベースラインリスクが30%(言い換えれば,70%の無再発生存率)で,薬剤Bの相対的な再発リスク抑制効果が50%であった場合,患者Aに薬剤Bを使用することで,0.3×0.5=0.15,つまり15%の絶対的な再発リスク抑制効果が得られることが期待され,無再発生存率は85%と算出される。 3 ) 治療効果・予後予測ツール関連課題:病理診断BQ4「HER2検査はどのような目的で,どのように行うか?」関連課題:病理診断FRQ1「浸潤性乳癌におけるKi67評価はどのような症例に勧められるか?評価方法はどのようにしたらよいのか?」19(4) HER2HER2は抗HER2療法に対する治療効果予測因子であるとともに,予後予測因子でもある。(5) Ki67における予後不良因子である。①乳癌病変が広範で乳房部分切除術では整容性が保てない患者②局所再発リスクが高い,局所進行もしくは炎症性乳癌患者③乳房部分切除をした際に放射線療法ができない患者④リスク低減乳房切除術を行う遺伝性乳癌卵巣癌症候群の患者4.治療方針a. 外科療法 1 ) 乳房に対する手術
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