放射線療法検索キーワード・参考にした二次資料 PubMedで,“Breast Neoplasms/radiotherapy”,“Breast Neoplasms/surgery”“Postoperative Care”,“Postop-erative Complications”,“Genes,BRCA1”,“Genes,BRCA2”,“BRCA1 Protein”,“BRCA2 Protein”のキーワードで検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は1995年1月~2021年3月とし,9編を採用した。た。皮膚障害は1編の症例対照研究で報告があり,RTOG/EORTCスコアGrade 2以上の頻度が病的バリアント保持群で1.82%,散発群で3.76%であった。皮下組織・肺障害・肋骨骨折は2編の症例対照研究3)4)でメタアナリシスを行った。皮下組織障害については,1編は皮弁壊死,1編はRTOG/EORTC Grade 2以上についての評価で評価法は異なるが,両群に有意差は認めなかった(OR0.90,95%CI0.39—2.12,p=0.82)。肺障害は,1編は肺線維化,1編はRTOG/EORTCスコアでGrade 2以上についての評価である。2編ともに散発性乳癌群での発症がなく,病的バリアント保持群での発症率は1.82%(1/55)と1.40%(1/70)で,メタアナリシスにて有意差は認めなかった(OR5.37,95%CI0.55—52.24,p=0.15)。肋骨骨折もメタアナリシスにて有意差を認めていない(OR1.92,95%CI0.27—13.88,p=0.52)。心障害については1編の症例対照研究3)で評価され,両群ともに発症は報告されていない。以上のように,放射線療法による有害事象は,急性期・晩期ともに病的バリアント保持者であっても,散発性乳癌患者を上回ることはない。放射線療法による対側乳癌発症については病的バリアント保持者において照射群と非照射群で差があるかを検討した。Kathleen Cuningham Foundation Consortium for Research into Famil-ial Breast Cancer(kConFab)の後ろ向きコホート研究5)では,643例中148例(23.0%)で対側乳癌を認めたが,放射線療法による対側乳癌増加は認めていない(p=0.44)。オランダからの418例の解析6)でも放射線療法による対側乳癌の増加は認めず,発症時40歳未満の症例に限定しても有意な増加は認めなかった。一方,国際的なコホート研究であるWECARE studyの報告7)においては放射線療法による対側乳癌増加を認めたが,有意差はなかった〔リスク比(RR)1.4,95%CI0.6—3.3,p=0.7〕。対側乳癌以外の二次がんについてはイスラエルからの報告がある8)。放射線療法を受けた病的バリアント保持者で5年以上経過観察された266例が対象で,経過観察期間の中央値は10年(5~27年)であるが,1例(0.38%)に甲状腺乳頭癌を認めたのみであった。このように,BRCA病的バリアント保持者であっても放射線療法による有害事象は散発性乳癌患者と同等である。BRCA病的バリアント保持者においては対側乳癌の発症率が高いものの,対側乳癌も含めた二次がんは,照射を行っていないBRCA病的バリアント保持者と比較して増加しない。米国臨床腫瘍学会,米国放射線腫瘍学会,米国腫瘍外科学会の遺伝性乳癌に関するガイドラインにおいても,乳房部分切除術後またはPMRTが考慮されるBRCA病的バリアント保持者に対して,放射線療法は差し控えるべきではないと述べられている9)。以上より,乳房部分切除術後であれば放射線療法を行い,乳房全切除術後でも,散発性乳癌と同様の臨床的適応に従って行うことが標準治療である。本BQは2018年版で乳房部分切除術後の放射線療法に限定したCQであった。2022年版ではPMRTにも言及したうえで当初CQとして作成を開始したが,ランダム化比較試験などの実施は困難であり,国際的にコンセンサスも得られているため,BQに変更した。BQ 10 461
元のページ ../index.html#21