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●Non—surgicalablationが乳房部分切除術と同等の局所療法効果を有するとの十分な1.乳房手術根拠はない。固形癌に対する熱凝固療法や凍結療法といった非切除治療(non—surgical ablation)は,近年,多くの癌腫に対して臨床応用が開始されている。特に肝臓癌におけるnon—surgical ablationの普及は目覚ましく,熱凝固療法の一つであるラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation;RFA)はすでに保険収載されている。乳癌においてもnon—surgical ablationにより局所制御が得られれば,乳房部分切除術に代わる局所療法の選択肢となり得る可能性があるが,その適応,手技,治療効果の判定法などが非常に重要である。現時点での乳癌におけるnon—surgical ablationの妥当性を文献的に検証する。乳癌に対するnon—surgical ablationとしては,①ラジオ波焼灼療法(RFA),②凍結療法,③集束超音波療法等がある。適格基準としては腫瘍径2 cm以下の小さな乳癌を対象にしている報告が多い。凍結療法に関しては,Lanzaらのレビューによると,凍結療法により,73%に完全な局所制御が可能であり,整容的満足度は99%であったと報告している1)。凍結療法の探索的第Ⅱ相試験(ACOSOG Z1072試験)によると,切除標本の病理学的評価による腫瘍の凍結療法成功率は75.9%で,MRIによる陰性的中率は81.2%であった2)。熱凝固療法のシミュレーション研究では,集束超音波療法3),RFA4)~6)のいずれに関しても概ね90%以上の症例において腫瘍壊死が得られており,一定の局所治療効果が報告されている。RFAや集束超音波療法では,治療直後は癌細胞が一定の形態を保持するため通常の病理学的検索では治療効果の判定が困難な場合があり,nicotinamide adenine dinucleotide—diaphorase(NADH)染色による細胞死の判定が行われることが多い。RFAの治療成績に関しては,平均腫瘤径13 mm(5~20 mm)の日本人乳癌52人に対しRFAによる熱凝固を放射線併用で行い,平均観察期間15カ月(6~30カ月)時点では再発をまったく認めなかった7)。Chenらによる15論文(404症例)のメタアナリシスによると,RFAによる完全焼灼率は89%であり,整容面では96%の症例において良好であったが,合併症では4%の皮膚熱傷がみられた8)。日本人乳癌に対しRFAを行った386例を対象にした多施設の後ろ向き研究によると,平均腫瘤径は1.6 cm,平均観察期間は50カ月,腫瘤径2 cm以下の群は2.1 cm以上に比して,有意に局所再発率が低かった(2.3% vs 10%,p=0.015)9)。現在,わが国では非切除を前提とステートメント308背景解説FRQ 4Non—surgical ablationは早期乳癌の標準的な局所療法として勧められるか?

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