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推 奨■背 景 肝細胞癌は高頻度に再発を繰り返し,最終的には外科切除や肝移植,穿刺局所療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE)の適応とならない進行肝細胞癌に進展することが多い。このような場合に全身薬物療法が行われるが,癌の進行とともに全身状態が悪化していたり,臓器機能が低下していたりすることが多いため,薬物代謝および有害事象の観点から投与に際しては患者の全身状態(performance status;PS)や臓器機能を考慮する必要がある。本CQでは,薬物療法の適応について推奨を検討する。■サイエンティフィックステートメント 第4版におけるCQ43「切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?」に,治療適応を含め,各薬剤の推奨に関する記載がされていたが,近年の薬物療法の発達に伴い,保険収載された薬剤が増加し,複雑化してきているため,2021年版(第5版)においては,本CQであるCQ38「薬物療法は,どのような患者に行うのが適切か?」,CQ39「切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法に何を推奨するか?」,CQ40「切除不能進行肝細胞癌の二次薬物療法以降の治療に何を推奨するか?」の3つのパートに分割することとなった。 新たに設定したCQであるため,2000年1月1日から2020年1月31日に発表された論文について設定した検索式を用いて363篇が抽出された。一次選択にて25篇を選択し,二次選択にて6篇を採用し,ハンドサーチにて1篇を追加し,最終的に計7篇を採用した。 本CQについては各種薬剤の治験(第III相試験)の組み入れ条件が参考となる。以下,各薬剤の治験組み入れ条件を示す。 一次薬物療法としてアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法とソラフェニブを比較する第III相試験の組み入れ条件は,全身療法未治療で,測定可能病変を有する切除不能または転移性肝細胞癌で,Child—Pugh分類AかつECOG performance status 0または1の症例であった1)。 一次薬物療法としてレンバチニブとソラフェニブを比較する第III相試験の組み入れ条件は,切除不能肝細胞癌で,Child—Pugh分類AかつECOG performance status (強い推奨,エビデンスの強さA)薬物療法は,外科切除や肝移植,穿刺局所療法,TACEなどが適応とならない進行肝細胞癌で,PS良好かつ肝予備能が良好なChild—Pugh分類A症例に行うことを推奨する。210第7章 薬物療法CQ薬物療法は,どのような患者に行うのが適切か?38

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