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れなかった9)。一方で本邦のIzumi,Kudoらは3cm以内3個以下の肝細胞癌に対し,切除のRFAに対する優越性を示す研究デザインでRCTを行い,切除(150例)とRFA(152例)の予後を比較したが,全生存(p=0.838),無再発生存(p=0.793)とも予後に統計学的な有意差を認めず,切除のRFAに対する優越性は示されなかった11,12)。 今回新たに放射線治療についての論文も採用となった。Bushらは陽子線治療(33例)とTACE(36例)の予後を比較したRCTの中間解析で陽子線治療とTACEの短期の生存期間に差はないが局所再発や有害事象は低率であることを13),Kimらは陽子線治療(72例)とRFA(72例)の予後を比較したRCTを行い陽子線治療のRFAに対する非劣性を報告した14)。また,体幹部定位放射線治療(SBRT)とRFAを,肝機能を因子に含めた傾向スコアマッチングにて比較した報告が2篇あり,予後に差はなく局所制御率はSBRTが勝ると報告されている15,16)。■解 説 肝細胞癌の治療方針を選択するにあたり肝予備能評価はChild—Pugh分類に基づいて行い,肝切除を考慮する場合はICG検査を含む肝障害度を用いる。肝機能良好ならば肝切除を推奨している。しかし,本邦と欧米では門脈圧亢進症例(食道静脈瘤の存在または血小板数10万/μL以下)に対する治療方針が異なっている。すなわち,欧米のBCLCステージングシステムでは門脈圧亢進症例の肝切除を避け,移植やRFAを選択するよう推奨している17)。本邦では術前の内視鏡的食道静脈瘤治療や系統的亜区域切除などを組み合わせることで安全に肝切除が施行されている。 肝切除とRFAを比較したRCTが8編4—12),RCTのメタアナリシスが1篇採用され18),内容につき検討された。第4版で検討された過去の報告は,研究デザインや背景因子に問題があり,本邦の実情にそぐわないことからエビデンスとして採用されなかった。今回採用されたYuらのRCTのメタアナリシスの結果では,長期の無再発生存は切除の方が良いと報告されているが,解析された文献の多くが第4版の検討で採用されなかった論文であり,推奨に反映されなかった18)。2016年以降の論文で新たに採用となった3篇のRCTのうち1篇で,Leeらは無再発生存が切除の方が良いと報告したが,登録症例数が68例と目標症例数の217例に遠く及ばず,治療推奨のエビデンスとしては採用されなかった10)。香港のNgらはミラノ基準内の肝細胞癌に対しRFAの3年無再発生存率における20%の優越性を示す試験デザインでRCTを行い,切除,RFAとも109例の症例で検討したが,3年無再発生存率は切除50.9%,RFA 46.6%(p=0.072)と両群に統計学的な有意差を認めなかった9)。また,本邦発の切除とRFAのRCTであるSURF試験の結果が2019年にIzumiらによって11),続いて2021年にKudoらによって12)米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された。SURF試験は全生存率,無再発生存率いずれもRFAに対する切除の10%の優越性を示すことを研究デザインとして行われたが,3年無再発生存率は切除49.8%,RFA 47.7%(p=0.793),5年全生存率は切除74.6%,RFA 70.4%(p=0.838)と有意差を認めず,これらの結果を基に本CQでは切除とRFAは同等に有効であると結論づけられた。一方で肝切除78第2章 治療アルゴリズム

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