modelを用いて解析したところ,3~12カ月間隔のサーベイランスでは,無再発生存期間に差は認められなかったとしている。また,24例の再発例のうち,1例を除くすべての症例で追加治療が行われたが,再発後の生存期間中央値は14カ月であった。本報告では,画像撮影回数を減らしてもサーベイランスの利益を損なうことはなく,検査に伴う患者負担の軽減につながると結論しているが,少なくない再発率と再発後の予後が不良であることを考慮すると,解釈には注意を要する。また,Hwang13)らの単施設後ろ向き研究では,肝細胞癌に対して生体肝移植を行った334症例において,移植後5年間は1~3カ月毎の腫瘍マーカー測定,3~6カ月毎の腹部骨盤部dynamic CTと胸部X線,追加検査として4~12カ月毎の胸部単純CTを行い,5年目以降も定期的に採血,画像検査を用いた経過観察を行ったところ,周術期死亡16例を除いた318例における肝癌再発は平均77カ月の観察期間において68例(21.4%)であったと報告している。また,このうちミラノ基準内肝細胞癌に対する肝移植後では243例中36例に再発が認められ,3年以内の再発が30例と多かったが3年以降でも散発的に6例に再発を認めた。一方,ミラノ基準外肝細胞癌においては全例3年以内の再発であり,このうちAsan基準内(腫瘍径5cm以内かつ腫瘍個数6個以内)では33例中3例に,Asan基準外では42例中29例に再発を認め,Asan基準外では有意に再発率が高かったとしている。再発リスクに応じた経過観察法を提唱するとともに,ハイリスク症例における術後3年間の綿密な経過観察の重要性ならびにミラノ基準内であっても長期的な経過観察の必要性を指摘している。■解 説 肝移植後再発の早期発見が予後を改善するというエビデンスは乏しいが,限局した再発巣であれば切除も考慮されることや全身薬物療法による治療機会が得られる点において,移植後の経過観察は他の肝細胞癌の根治治療後と同様に重要であると考えられる。米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは,移植後2年間は3~6カ月間隔でのAFP測定ならびにCT,MRIを,それ以後は6~12カ月間隔で経過観察を行うことが提唱されているが,その根拠となる論文は示されていない。 肝移植後の経過観察法に関するエビデンスは少なく,改訂委員会では弱く推奨するのか,強く推奨するのかで議論が分かれた。移植後の再発率は2割程度で移植の適応基準を遵守すれば再発率は低く,また,移植後1年を過ぎればさらに再発は少なくなること,再発パターンとして肝外転移が多いことについて議論となったが,最終的には,NCCNのガイドラインにおいても肝移植後2年間は3~6カ月毎の画像による経過観察が推奨されていること,肝移植の場合は再発時の治療法は異なることもあるが,同じ肝細胞癌を扱っており再発を発見する方法論は同じと考えられることより,肝切除や穿刺局所療法で得られたエビデンスを外挿することに問題がないことを確認し,投票となった。276第9章 治療後のサーベイランス・再発予防・再発治療
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