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推 奨■背 景 肝細胞癌に対して肝移植を行っても一定の確率で再発を認めることから,肝移植後の経過観察および再発後の治療の選択が重要である。■サイエンティフィックステートメント 本CQは今回の改訂に際し,第5版で新設されたものである。「肝細胞癌」「肝移植」「サーベイランス」をキーワードとして,2000年1月1日から2020年1月31日までに報告された論文について検索し,341篇が抽出された。そのなかから「経過観察の画像診断の方法について述べたものを採用する」という方針の下に一次選択で7篇,二次選択で1篇1)を採用した。肝移植後の至適経過観察法に関するエビデンスレベルの高い論文は存在しなかったが,経過観察の重要性に関しては異論がなく,改訂委員会で協議の結果「肝癌再発の経過観察のプロトコールと再発率が記載されている観察研究あるいはRCT」を追加することとなった。肝移植後肝癌再発に対する予防,治療に関するCQ51,CQ52の採用論文のなかから上記を満たす文献を11篇2—12)追加し,さらにそのうちの1篇12)に引用されていた経過観察のプロトコールに関する後ろ向き観察研究を1篇13)追加して,最終的に計13篇を採用した。 肝移植が臨床応用された初期においては,肝細胞癌に対する肝移植は高率に移植後再発を来していたことからその移植成績は不良であったが,ミラノ基準をはじめとした肝細胞癌に対する移植適応基準を設けることにより,肝細胞癌を合併していない患者と同等の移植成績が得られている。一方で,肝移植後の累積肝癌再発率は12.5~21.4%と報告1—13)され決して少なくない。また,経過観察法に関しても術後早期に関しては少なくとも3~6カ月間隔の画像検査,腫瘍マーカーを軸になされている1—13)ことが多いが,定まったものはない。 Liu1)らの単施設後ろ向き研究では,125例の肝細胞癌患者(ミラノ基準外37例:29.6%を含む)に対して肝移植を施行し,胸腹部CTあるいは胸部CTと腹部MRI画像を術後3カ月毎に5年間,それ以降は6カ月毎に実施することの有用性を検討した。平均84.3カ月の観察期間において24例(19.2%)の再発を認め,2年以内に14例(11.2%),3~5年までに9例(7.2%),5年以降に1例(0.8%)再発を認めた。Frailty (強い推奨,エビデンスの強さC)CQ 50275肝切除後・穿刺局所療法後と同様,初発時の超高危険群に対するサーベイランスに準じた腫瘍マーカーと画像検査の併用による経過観察を推奨する。CQ肝移植後,どのように経過観察するか?50

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