CQ 16 71における3カ月投与群(試験群)の6カ月投与群(対照群)に対する非劣性は統計学的には証明されなかった(N=12834人,3年無病生存率74.6% vs. 75.5%,ハザード比1.07,95%信頼区間1.00‒1.15)。一方,有害事象発生割合は3カ月投与群で低く,特にgrade 2以上の感覚性末梢神経障害の発現頻度も大幅に低いことが示された(6か月群FOLFOX/CAPOX 48%/45%,3カ月群FOLFOX/CAPOX 17%/14%)。また,治療効果と治療レジメン(FOLFOX群とCAPOX群)との間に交互作用が認められ,FOLFOX群では6カ月投与群の3カ月群に対する優越性が示される一方で,CAPOX群では3カ月群の6カ月群に対する非劣性が示された。また,事前に計画された別のサブグループ解析ではないが,再発低リスク症例(T1‒3かつN1)ではCAPOX 3カ月投与群の非劣性が確認された。また,本邦で実施されたACHIEVE試験は,CAPOX群が75%と多数を占めるものの,3カ月投与と6カ月投与の3年無病生存は同程度であり(6カ月77.9%,3カ月79.5%),IDEA試験と同様の傾向が確認された530)。また,感覚性末梢神経障害の発現も3カ月投与で有意に少なかった146)。 コストについては,MOSAIC試験(Stage Ⅲ結腸癌を対象にOX併用療法とフッ化ピリミジン単独療法を比較)139)の患者レベルデータをもとに本邦で実施された費用対効果解析の報告531)を含め,OX併用療法は費用対効果に優れた治療であると報告されている。 以上より,Stage Ⅲ結腸癌に対してOX併用療法による術後補助化学療法を行うことが推奨されるが,実地臨床では,再発リスクと期待される効果(図1),有害事象,治療コスト,通院回数などの充分な情報提供のもとに,患者の全身状態や治療意欲等も含め,総合的な判断のもとに治療と治療期間を選択することが望ましい。特に再発低リスク例においてはCAPOX 3か月間投与が有力な治療選択肢となり得ると考えられる。考慮すべき再発リスク因子としては,病理学的ステージ・T因子・N因子,RAS/BRAF遺伝子型,MSI statusなどが挙げられる。また大腸癌研究会のホームページには,日本人データを用いた結腸癌術後予後予測ノモグラムが用意されている(http://nomogram.jsccr.jp/nomograms)532)。 直腸癌については,FU単剤による術前化学放射線療法後のypStage Ⅱ‒Ⅲ直腸癌治癒切除症例に対する,術後FOLFOXと5-FU+l-LVの比較試験において,OX併用による有意に優れた再発抑制効果が示されており(ハザード比0.657,95%信頼区間0.434‒0944)533),結腸癌と同様にOX併用の効果が期待できる。フッ化ピリミジン単独療法については,Stage Ⅲ直腸癌におけるUFT単独(1年間)の手術単独に対する無再発生存における優越性(ハザード比0.52,95%信頼区間0.33‒0.81,P=0.0014)(NSAS‒CC試験)147,534,535),Stage Ⅱ/Ⅲ直腸癌におけるS-1(1年間)のUFT単独(1年間)に対する優越性(ハザード比0.77,95%信頼区間0.63‒0.96,P=0.0165)が示されている(ACTS‒RC試験)148)。CQ 16:Stage Ⅲ大腸癌術後補助化学療法の治療期間は6カ月が推奨されるか?術後補助化学療法の治療期間は6カ月を強く推奨する。(推奨度1・エビデンスレベルA)ただし,CAPOX療法を再発低リスクの結腸癌に用いる場合は,3カ月行うことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルA) 5-FU+levamisole(LEV)(12カ月)を対照群として,5-FU+l-LV(Mayo法を27週,またはRPMI法を32週)および5-FU+l-LV+LEV(6カ月投与)の比較が行われ,3.8年後の
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