乳癌領域ない効果は「中」3名,「小さい」2名,「さまざま」1名,「分からない」6名と意見のばらつきが大きかった。このばらつきについては合併症,満足度,セクシャリティ等の様々な評価項目が採用されていることで非一貫性が大きいことも要因であったが,CRRMに対する立場(医療者か当事者か)によっても望ましくない効果の捉え方が異なる点も共有された。 今回採用された論文の中にランダム化比較試験はなく,また今後も実施することは実質的に不可能である。またリスク低減手術を選択する場合,RRSOは行わずCRRMのみ行うことは少ないであろうと予想され,RRSOの影響を調整したOSのデータは今後も出すことはできないであろうという意見が交わされた。❷ アウトカム全般に対するエビデンスの確実性はどうか エビデンスの確実性については,「弱」2名,「中」10名であった。CRRMによる乳癌発症リスク低減効果についてはメタアナリシスを行った結果,ほぼ確実であると判断したが,一方,直接的なOSへの影響を評価できるエビデンスが不足していることが「中」を選んだ理由としてあげられた。またBRCA1とBRCA2の間で明らかにサブタイプが異なるため,それぞれを分けて考える必要があるということも重要なポイントとして指摘があった。❸ 患者の価値観や意向はどうか 「重要な不確実性またはばらつきあり」4名,「重要な不確実性またはばらつきの可能性あり」8名の結果であり,価値に関する方向性を一致させることの難しさが示された。また,当事者からは乳癌発症への不安と乳房の喪失感の間で生じる葛藤についても言及され,価値観や意向に一個人の中でも一貫性をもつことの難しさが共有された。❹ 望ましい効果と望ましくない効果のバランス この項目は本CQの投票の中で最も意見が分かれる結果となった。「介入も比較対照もいずれも優位ではない」1名,「おそらく介入が優位」7名,「介入が優位」1名,「さまざま」1名,「分からない」1名であった。OSに対するCRRMの直接的な効果をRRSOの影響を調整して検証できない点が重要な論点となった。望ましい効果がOSであるか,あるいは対側乳房の乳癌発症予防なのかによってもバランスの評価は大きく異なるため,見解の統一を図ることが難しいと考えられた。一方,望ましくない効果についても評価項目が多岐にわたることも見解のばらつきの一因と考えられた。❺ コスト資源のバランスはどうか 費用対効果については,そのアウトカムのばらつきが反映され,12名中11名が「さまざま」に投票した。容認性は,「おそらく,はい」7名,「さまざま」5名であった。実行可能性は,「おそらく,はい」4名,「はい」7名,「さまざま」1名であった。CRRMは保険診療の中で実施可能となったが,実施には一定の施設基準を満たすことが必須であり,このような観点からすべての委員が「はい」を選択できなかったが見解は概ね一致した。❻ 推奨のグレーディング 以上より,BRCA病的バリアントを有する乳癌既発症者においてCRRMは推奨されるかについて討議し推奨草案は以下とした。推奨草案:BRCA病的バリアントを有する乳癌患者に対し,CRRMを条件付きで推奨する。 12名全員の一致で推奨草案を支持し,採用が決定した。103乳 癌 CQ 1
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